小規模宅地の特例(貸付事業用宅地について)

質問

私(83歳:男性)は、小さなアパートを所有しています。
(入居者は全て近隣のサラリーマン世帯で、身内は家族は入居していません)

このアパートは築30年ですが、建物の価値は殆ど残っていないと思います。
ですが、都内にあるため、土地の価額が高く、次にアパートを相続する予定の長男に、多額の相続税がかかることが予想されます。

確定申告をお願いしている税理士先生に相談したところ、
「小規模宅地の特例」という制度が使えれば、相続税が安くなりますよ」
とのアドバイスを頂きました。

私も病気を抱えており、あと何年、元気でいられるか分かりません。
今のうちに、だいたいの相続税を計算しておきたいと思います。
相続税が安くなるという、小規模宅地の特例について、教えて頂けますか?

回答

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

その税理士先生がおっしゃっている制度は、小規模宅地の特例のうち、「貸付事業用宅地等(かしつけじぎょうようたくちとう)」と呼ばれるものです。

土地を貸している、土地の上にアパートを建てて貸している、といったように、土地を不動産貸付業に使っている場合、土地の価額から50%を減額してくれる制度です。

詳しくご説明していきましょう。

 平成28年時点の法律を基に記事を作成しています。制度改正や細かな条件があるため、実行前に必ず税理士等の専門家にご相談ください。

相続税理士による実務アドバイス

貸付事業用宅地等とは?

小規模宅地の特例には、いくつか種類があります。

 詳しくは、こちらの、相続税が節税できる「小規模宅地の特例」の概要について、をご覧ください。

今回は、そのうちの「貸付事業用宅地」について、ご説明します。
次の図をご覧ください。

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こちらの図のように、父(被相続人)の不動産貸付業を息子(親族)が引き継いだ場合は、小規模宅地の特例を受けることができます。

この小規模宅地の特例のうち、「貸付事業用宅地」は、つぎのような制度になっています。

  • 土地の価額から50%を減額できる
  • 適用面積は200㎡(約60坪)まで

そうすると、1億円の土地の場合、面積が200㎡以下であれば、

「1億円-1億円×50%=5,000万円」

となり、相続税計算上は、1億円の土地が5,000万円になります。

 ただし、土地の面積が200㎡を超える場合は、その超えた部分について適用はありません。

この特例を受けるための条件は、つぎのとおりです。

  • 父(被相続人)が不動産貸付業を行っていたこと
  • 長男(親族)が土地を相続して不動産貸付業を引き継いだこと
  • 申告期限までに土地を保有し続けていること
  • 申告期限までに不動産貸付業を継続していること
  • 不動産貸付業の対価(地代・家賃)について適正額を受け取っていること

代表的な3パターンについて、確認してみましょう。

1.土地と建物の両方を長男が相続した場合

今回のご質問のケースは、こちらに該当するかと思います。

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この場合、図のように、相続税の申告期限までに息子がアパート(土地建物)を相続し、不動産貸付業を続ければ、小規模宅地の特例を受けることができます。

ですので、お金が欲しいということで、申告期限前に売却してしまうと、この特例を使うことはできなくなってしまいます。

2.土地を父が持っており、建物は長男が持っている場合

父の土地をタダで借りて、長男が建物を建ててアパート経営をしている。
そのような場合も、ままあります。

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この場合、父は長男から土地使用料(地代)をもらっていないことが殆どだと思います。
その場合、使用貸借(タダで貸しているということ)になり、父は土地を事業に使っていないものとして、原則として貸付事業用宅地等にならず、小規模宅地の特例を使うことができません。

ですが、父(被相続人)と長男(親族)が、同一生計(生活のお財布が一緒)であれば、特例的に小規模宅地の特例を使うことができます。

なお、同一生計がどうかの判断ですが、同居していれば、まず問題なく同一生計になるでしょう。
(食費や光熱費をシェアしているのですから)

ですが、別居していて、長男に給料や事業収入があると(普通はあると思います)、同一生計にはならないでしょう。

ですので、別居している場合で、建物を長男が保有しているケースでは、原則として小規模宅地の特例を受けられないことになるでしょう。

 小規模宅地の特例を受けるために、長男が父に適正地代を払うことがあるかもしれません。ですが、そうすると借地権の課税問題が発生するため、多くの場合、地代を払わない(または払っても固定資産税程度)だと思います。税金は総合的に考えることが必要なんですね。

3.貸している土地を相続した場合

土地それ自体を貸している場合があると思います。
代表例としては駐車場でしょうか。

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駐車場も不動産貸付業になるため、今までご説明してきた要件を満たせば、小規模宅地の特例を受けることができます。

ですが、条件があります。それは、

「駐車場に何かしらの設備があること」

が条件となります。

 法律では「建物または構築物」の敷地であること、という表現になっています。

図のような駐車場の場合、建物はありません。
(ちなみに、立体駐車場は原則として建物ではなく構築物に該当します)

ですが、都心にある駐車場は、アスファルト敷になっており、さらにはフェンスもありませんか?
これらは構築物なので、これらがあれば小規模宅地の特例を受けることができます。

ですが、砂利敷きの駐車場(いわゆる「青空駐車場」)では、ダメなんです。
砂利は構築物ではありませんから。

ですので、駐車場で小規模宅地の特例を受けたければ、父上の生前にアスファルト敷きにしておくといった対策が必要かもしれません。

適正な対価をもらっていること

この小規模宅地の特例(貸付事業用宅地)を受けるためには、相手から「相当の対価」をもらっていることが条件となります。
つまり、地代や家賃を、近隣の相場並にもらっていることが条件となるんです。

ですので、他人に貸しているが、建物の老朽化や交渉難航により、努力しているのに家賃が安いまま来てしまっていた。
これは特に問題にはならないと思われます。

ですが、家族や親戚に、相場より安く貸していた。
この場合には注意が必要です。
万が一、税務署に「相当の対価」をもらっていないと指摘されたら、小規模宅地の特例が受けられないかもしれません。

また、身内の不動産管理会社へ一括転貸している場合も注意が必要です。こちらも、家賃が相場よりも低いと、小規模宅地の特例が受けられなくなる可能性があります。

家賃が、近隣の相場感から離れていないか、年に1回はチェックするようにしてみてください。

 

小規模宅地の特例のうち、貸付事業用宅地について確認してきました。
近年の不動産投資ブームの流れで、10年後~20年後くらいには、この貸付事業用宅地が大いに利用されるようになるでしょう。
(そのときまでに税制改正で廃止になっている可能性もありますが・・・)

特定居住用宅地と並んで利用されることの多い貸付事業用宅地について、ぜひ確認してみてくださいね。

 

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。

 

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