小規模宅地の特例(特定同族会社事業用宅地について)

質問

当社は同族会社を経営しております。

社長(私の父)が高齢で、数年後に私(長男)に代替わりを予定しております。

この会社は、父が個人で所有している土地の上に、同族会社が建物を建て、そこで事業を行っております。
(事業の内容は、商品小売業です)

そのため、この土地は、父個人が会社に貸している形になっております。

この、父が会社に貸している土地について、高い相続税がかかったら、会社を続けることが難しくなります。
そのことを、当社の顧問税理士の先生に相談したところ、
「小規模宅地の特例が使えれば、相続税が安くなりますよ」
との説明を受けました。

我々家族のようなケースでも、相続税を計算する際に、土地が安くなると言う、小規模宅地の特例を使うことができるのでしょうか?

回答

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

ご質問のケースでは、いくつかの条件を満たせば、小規模宅地の特例を使うことができると思います。

小規模宅地の特例には、いくつか種類がありますが、今回のケースの場合は、

「特定同族会社事業用宅地(とくていどうぞくがいしゃじぎょうようたくち)」

と呼ばれるものに該当します。

制度の概要、注意点について、ご説明していきましょう。

 平成28年時点の法律を基に記事を作成しています。制度改正や細かな条件があるため、実行前に必ず税理士等の専門家にご相談ください。

相続税理士による実務アドバイス

特定同族会社事業用宅地とは何ですか?

小規模宅地の特例には、いくつか種類があります。

 詳しくは、こちらの、相続税が節税できる「小規模宅地の特例」の概要について、をご覧ください。

今回は、そのうちの「特定同族会社事業用宅地」について、ご説明していきます。
長いタイトルですね(^_^)

これは、簡単に言うと、つぎのようなパターンです。

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この図のように、父個人が持っている土地と建物を、会社のために貸している。
そして、会社は家賃をきちんと払って、事業を行っている。
この場合には、小規模宅地の特例を使うことができます。

ですが、いくつか条件があり、簡単にまとめると次のようになります。

  1. 相続が起きた時点で、会社を身内で支配していること
    (身内合計で株式の50%超を保有していること)
  2. 土地を取得した親族が申告期限までに会社役員になっていること
  3. 土地を取得した親族が、申告期限までに保有し続けること
  4. 同族会社が、申告期限まで事業を続けること
  5. 土地(または建物)の適正な使用料を払っていること
    (地代または家賃が適正額であること)
  6. 事業が不動産貸付業でないこと
    (不動産貸付業の場合は「貸付事業用宅地」になります)

ご質問のケースでは、ほとんどの条件を満たす(またはこれから満たすことができる)と思います。

ですが、1点だけご注意頂きたいのが、
「地代(または家賃)が適正額でなければならない」
ということです。

 これについては、最後に改めてご説明します。

この小規模宅地の特例は、以前ご説明した特定事業用宅地(個人事業で土地を使っていた場合)と同じく、

  • 土地の価額から8割減額できる
  • 土地面積の400㎡(約120坪)まで適用できる

というようになります。
ですので、1億円の土地で、面積が400㎡以下であれば、

「1億円-1億円×80%=2,000万円」

となり、大幅な減額をすることができますので、是非とも使いたい特例になります。

特定同族会社事業用宅地の、代表的な3パターンについて、ご説明していきましょう。

1.土地と建物の両方を父が所有している場合

こちらをご覧ください。

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  • 土地と建物、両方とも亡くなった父が所有
  • その建物に会社が入っていて、事業を行っている
    (不動産貸付業以外の事業を行っている)
  • 建物を適正額で会社に貸している
    (相場並の家賃をもらっている)

この前提であれば、

  • 長男が申告期限までに役員になる
  • 長男が土地建物を相続して申告期限までに保有し続ける
  • 申告期限まで会社事業を継続する

これを満たせば、小規模宅地の特例(特定同族会社事業用宅地)を使うことができます。
(他にも細かな条件がありますが、ここでは概要をご説明するため簡略化しています)

2.土地は父、建物は会社が所有している場合

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  • 土地は父、建物は会社が所有
  • その建物に会社が入っていて、事業を行っている
    (不動産貸付業ではない事業を行っている)
  • 土地を適正額で会社に貸している
    (相場並の地代をもらっている)

この前提の場合、

  • 長男が申告期限までに役員になる
  • 長男が土地を相続して申告期限までに保有し続ける
  • 申告期限まで会社事業を継続する

これを満たせば、上記と同じく、小規模宅地の特例(特定同族会社事業用宅地)を使うことができます。

3.土地は父、建物は同一生計の親族が所有している場合

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  • 土地は父、建物は長男(同一生計の親族)が所有
  • その建物に会社が入っていて、事業を行っている
    (不動産貸付業以外のの事業を行っている)
  • 土地は無償で、建物は有償(適正額)で会社に貸している

このようなパターンは、あまりないのかもしれませんが、これでも小規模宅地の特例(特定同族会社事業用宅地)を使うことが可能です。

ですが、父と息子の生計が同じ(生活のお財布が一緒)である必要があるので、条件が厳しくなります。
おきをつけください。

地代(または家賃)が適正額であるとは、どのような意味か?

上記の図の中で、

  • 地代が有償
  • 家賃が有償

という表現があります。

この有償とは、適正額をきちんともらう、という意味です。

「地代が有償」が条件の場合、地代が安すぎると、使用貸借(しようたいしゃく)契約となってしまいます。

 使用貸借契約とは、タダまたはタダに近い金額で貸している、というう意味です。

この場合は、小規模宅地の特例を使うことができません。

では、地代はどれくらい取れば良いのでしょうか?
答えは、

「(原則として)固定資産税の2倍~3倍以上」

ということになります。

 地代には、「相当の地代(そうとうのちだい)」や、「通常の地代(つうじょうのちだい)」という、難しい専門用語もありますが、ここでは説明を省略します。

ですので、「地代が有償」が条件となっている場合は、地代が安すぎないように気をつけてください。

また、「家賃が有償」とあるのも、地代と同じ考え方です。
この目安は、「近隣相場並の家賃」ということになります。
こちらもお気をつけくださいね。

不動産貸付業とは何か?

この小規模宅地の特例(=特定同族会社事業用宅地)は、その会社の事業が「不動産貸付業以外の事業」であることが要件です。

不動産貸付業等に該当すると、「特定同族会社事業用宅」地ではなく「貸付事業用宅地」に該当してしまうからです。

 不動産貸付業については、「小規模宅地の特例(貸付事業用宅地について)」をご覧ください。

この特定同族会社事業用宅地は、地代が有償または無償、家賃が有償または無償によって、使えるか使えないか、運命の分かれ道になってしまうことがあります。

ご質問者様のケースでは、地代が有償(適正額)であることが、特定同族会社事業用宅地の条件に含まれます。
ですので、今から顧問の税理士先生に、地代が適正額であるかどうか、確認されることをお勧め致します。

 ですが、地代が有償ということは、父上の収入になってしまいますから、父上の税金(所得税+住民税)が増えることになります。そのバランスも含めて総合的に検討することが必要となります。

小規模宅地の特例は奥が深いですね。色々と気をつけたいものです。

 

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。

 

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