小規模宅地の特例(特定事業用宅地について)

質問

先月、父が亡くなりました。

父は、若いときに商売(八百屋)を始めました。
八百屋は順調に発展し、20年ほど前に、父自ら、土地建物を購入して店舗を構えるまでに成長しました。

 長男である私は、10年ほど前から父の手伝いを始め、この八百屋を更に発展させるため、日々頑張っておりました。なお、父は亡くなる直前までお店に立って、生涯現役でした。

ところで、八百屋の土地建物は、亡くなった父の名義となっておりますが、この土地建物は、家族の話し合いで、2代目である私(長男)が相続することになりそうです。

この土地建物にも相続税がかかるのでしょうか?
また、相続税が安くなる特別な制度があると聞きましたが、それは、どのような制度なのでしょうか?

回答

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

ご質問のとおり、お父様名義の土地建物には、相続税という税金がかかります。

ですが、税務署も鬼ではありません。
商売に使っている土地や、住んでいる土地については、一定の条件のもと、土地の価額から、なんと8割引きしてくれる制度があります。

この制度は、小規模宅地の特例(しょうきぼたくちのとくれい)と呼ばれています。

小規模宅地の特例には、いくつか種類があるのですが、今回のご質問のケースでは、「特定事業用宅地(とくていじぎょうようたくち)」というものに該当します。

どのような制度なのか、簡単にご説明していきましょう。

なお、ここでは、説明を簡単にするため、「被相続人=父」との前提でご説明していますので、予めご了承ください。

 平成28年時点の法律を基に記事を作成しています。制度改正や細かな条件があるため、実行前に必ず税理士等の専門家にご相談ください。

相続税理士による実務アドバイス

事業(商売)に使っている土地の相続税が安くなる、「特定事業用」とは?

小規模宅地の特例には、いくつか種類があります。

 詳しくは、こちらの、相続税が節税できる「小規模宅地の特例」の概要について、をご覧ください。

今回のご質問のケースでは、小規模宅地の特例のうち、特定事業用宅地が使えると思われます。
この、特定事業用ですが、

  • 土地の価額から8割減額できる
  • 適用できる面積は最大400㎡(約120坪)

という特例です。

ですので、土地の価額が1億円でしたら、

「1億円-1億円×80%=2,000万円」

となり、相続税の計算上では、1億円の土地が2,000万円になってしまうのです。

この特例の趣旨は、
「亡くなった父(被相続人)の商売が、相続税が払えないという理由で消えてしまうと、まわりの家族も困るだろう。だから、家族が商売を継ぐなら土地の金額を安くしてあげよう!」
ということにあります。

この特定事業用には、つぎの2つのパターンがありまsので、それぞれについてご説明していきましょう。

1.父の事業(商売)を長男が引き継いだ場合

こちらの図をご覧ください。

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このケースでは、つぎの要件を満たす必要があります。

  • 申告期限までに親族が土地を取得していること
    (遺産分割を終えていること)
  • 申告期限までに父と同じ事業を引き継いで継続していること
  • 申告期限までに土地を保有し続けていること

つまり、事業を引き継ぐ親族(家族)が土地を相続し、同じ事業を続けてくれれば、小規模宅地の特例を使うことができるんです。

よくあるのが、父子一緒に商売をしていて引き継ぐケースです。
ですが、これ以外にも、会社勤めをしていた息子が、父の死亡を機に田舎に戻り、商売を引き継ぐといったケースも考えられます。

2.生計を一にしている長男が事業をしていた場合

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このケースは、父が既に八百屋を引退し、息子が引き継いでいるといったケースです。

この場合は、上記の条件に、「父と息子の生計が一緒」であることが条件となります。

例えば、父と息子が同居しているようなケースが考えられます。

では、父と息子が別居している場合はどうなるか?
この場合は、原則として「生計が別」になってしまうでしょうから、特定事業用宅地は使えないことになってしまうんですね。
(地代や家賃をとれば、貸付事業用宅地になる可能性はありますが・・・)

ですので、完全に代替わりしないことが必要かもしれません。

ですが、代替わりしないということは、八百屋の収入は父に貯まっていくわけですから、父の財産が増え、相続税が高くなってしまうかもしれません。
(息子に代替わりしておけば、息子の父の財産は増えず、息子の財産が増えます)

ですので、総合的に考えることが必要です。

また、このケースの面白いところ?は、息子が事業を転業してもOKというところです。
(相続発生前に八百屋をしていて、相続後に料理屋に変更しても良いのです。要は息子が転業しても事業を続けていれば良いのです)

色々なパターンに注意しなければなりませんね。

同じ事業を引き継がなければならないのか?

この「特定事業用宅地」のうち、最初にご説明したケース「1.父の事業(商売)を長男が引き継いだ場合」では、父と同じ事業を続ける事が条件でした。

では、つぎのようなケースはどうでしょうか?

(1)店の半分を八百屋とコンビニにした場合

息子が、売上が下がってきたために、相続後すぐに、八百屋の一部を改装してコンビニを始めた。
これは、OKです。
(八百屋部分だけでなく、コンビニ部分もOKなんですね)

(2)店の全部を飲食店にした

これはダメなんです。
というのも、一部の転業なら良いのですが、相続税の申告期限前に、全ての事業(八百屋)を他の事業(コンビニ)に変えてしまうと、もとの事業を続けていないとされて、小規模宅地の特例が使えなくなってしまいます。

ですので、転業したければ、相続税の申告期限が過ぎてから事業を変更しましょう。

(3)同じ事業かどうかの判定方法

総務省が出している「日本標準産業分類」という資料があります。
これは、日本の全ての事業を分類して、コード番号を付して整理したものです。

これによると、八百屋とコンビニは別の事業になります。また、ラーメン店とうどん屋さんも、別の事業になります。

ですので、息子さんがどうしても別の事業に転業したいのであれば、申告期限後にするか、父の事業を一部残すようにしましょう。

 2番目にご説明した「2.生計を一にしている長男が事業をしていた場合」については、あくまで息子さん独自の事業ですから、申告期限までに転業しても問題ありません。

なお、事業の内容が不動産貸付業の場合は、「特定事業用宅地」は使えず、「貸付事業用宅地」に該当しますので、お気をつけください。

 不動産貸付業については、「小規模宅地の特例(貸付事業用宅地について)」をご覧ください。

父の商売を引き継ぐ。
最近はそのようなことも少なくなっているのかもしれません。

ですが、都心の地価はまだまだ高い場所があります。
この特例をきちんと使って、余分な相続税を払わないようにしたいものですね。

 

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。

 

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