相続税が節税できる「小規模宅地の特例」の概要について

質問

私は会社員(45歳)です。

3年ほど前から入院していた父が、先月亡くなりました。

相続人は、つぎのとおりです。

  • 母(75歳)
  • 長男(45歳:相談者)

父の財産はあまり残っていなかったのですが、自宅(土地と建物)があります。

自宅の土地について、路線価で価値をざっと計算してみました。
すると、土地は、都内にあるせいか、約1億円となってしまいました。
このままでは、相続税の基礎控除(4,200万円)を超えてしまうので、相続税がかかってしまいます。

ところで、インターネットで調べたら、「小規模宅地の特例」というものがあり、これを使えれば、土地の金額が大幅に割引になると書いてありました。

本当でしょうか?また、本当であれば、どのような手続きが必要となるのでしょうか?
小規模宅地の特例について、分かりやすく教えてください。

回答

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)


小規模宅地の特例とは、「住んでいた土地」や「事業で使っていた土地」について、相続税が安くなる制度です。

ご質問者様の前提ですと、色々な条件がありますが、それを満たせば、小規模宅地の特例を使うことはできると思います。

小規模宅地の特例は、色々な種類があり、また、減額できる割合も違います。
そこで、このページでは、細かな内容に触れず、制度の概要をご説明していくことにしましょう。

 平成28年時点の法律を基に記事を作成しています。制度改正や細かな条件があるため、実行前に必ず税理士等の専門家にご相談ください。

相続税理士による実務アドバイス

 

<目次>

 小規模宅地の特例とは、どのような制度か?

 大きく分けて5つの特例がある!

 小規模宅地の特例の概要について

 使うための手続きは?

 小規模宅地の特例についてのまとめ

 

 

小規模宅地の特例とは、どのような制度か?

「小規模宅地の特例」とは、どのような制度なんでしょうか?
次の図をご覧ください。

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後でご説明しますが、小規模宅地の特例には、いくつかの種類があります。

ご質問者様のケースでは、「特定居住用宅地(とくていきょじゅうようたくち)」になりますから、小規模宅地の特例を使うことができれば・・・

「1億円-1億円×80%=2,000万円」

となり、なんと1億円の土地が(相続税計算上は)2,000万円になってしまいます。

 この特例は、後でご説明する「特定居住用」という種類のものです。適用できる面積に制限があり、330㎡(約100坪)までとなり、それを超えた面積については減額できません。おきをつけください。

父上の遺産額にもよりますが、この特例を使うことができれば、遺産額が相続税の基礎控除の範囲内に収まり、相続税が節税(場合によっては0円)になるかもしれません。

この特例を使うことができるのか、できないのか、きちんと確認することが大切です。

大きく分けて5つの特例がある!

小規模宅地の特例は、大きく分けて次の5つに分けることができます。

番号 用途 小規模宅地の種類 減額割合 限度面積 制度の趣旨
1. 自宅 特定居住用宅地 80% 330㎡ 遺された家族や同居親族の
生活を保護するため
2. 事業
(商売)
特定事業用宅地 80% 400㎡ 家族が事業を円滑に
引き継げるようにするため
3. 会社経営 特定同族会社
事業用宅地
80% 400㎡ 同族会社経営の
円滑な事業承継のため
4. 不動産
貸付
貸付事業用宅地 50% 200㎡ 不動産貸付事業の
円滑な承継のため
5. 郵便局 郵便局舎の
事業用宅地
50%
(80%)
200㎡
(400㎡)
地域の郵便局継続のため

※1 青色部分は、完全併用(面積調整なく同時に使うことができる)部分になります。

※2 5.の郵便局については、ほとんど実務で出てこないので、ここでの説明は省略させて頂きます。

「適用できる面積について」

小規模宅地の特例には、使うことのできる面積(面積上限)が決まっています。

例えば、2つの土地(自宅と賃貸アパート)があったとします。

  • 自宅(特定居住用宅地)
    ・・・165㎡
  • アパート(貸付事業用宅地)
    ・・・200㎡

自宅の特定居住用を優先して使い、残りを貸付事業用として使う場合は、次のように計算します。

自宅(特定居住用)

165㎡÷330㎡=50%
・・・上限面積330㎡のうち50%を利用

貸付事業用

200㎡(貸付事業用の上限面積)×(100%-50%(特定居住用で利用した分))=100㎡
・・・よって、貸付事業用として200㎡のうち100㎡のみ利用可

要するに、小規模宅地の対象となる土地が複数あった場合(例えば、自宅と賃貸アパート)、優先的に使った分の残りの割合を、他の特例から使うことができます。
ですので、この場合、自宅は特定居住用宅地として丸々165㎡、アパートは貸付事業用宅地として特定居住用の使い残し?分の50%分として200㎡×50%の100㎡を使うことができます。

ですので、どちらの特例を優先した方が相続税が安くなるのか?ということを考えて、決める必要があります。
このポイントは次のとおりです。

  • 土地の単価
    ・・・高い土地から使った方が有利
  • 特例の減額割合
    ・・・高い減額率のものから使った方が有利

私(税理士:石橋)自身、ある相続で、小規模宅地の対象の土地が10ほどあったことがあります。
この場合、どの特例を優先して使うのか、エクセルで簡単なシミュレーションを作り、一番安くなる組み合わせを探すことになります。

また、上の図の青色部分は、税制改正で追加された部分です。
(平成27年1月1日以降の相続より適用されます)

本来であれば、先程のご説明の通り、2つの特例を使う場合、後から使う特例は、最初に使った特例の、残りの割合しか小規模宅地を使うことが出来ません。
ですが、1.の特定居住用宅地と、2.の特定事業用宅地については、完全併用することができるようになったのです。

つまり、小規模宅地が2つあり、特定居住用宅地と特定事業用宅地であったならば、調整計算せず、それぞれ330㎡と400㎡、最大で730㎡まで使うことができるようになりました。
このような事例は、あまりないのかもしれませんが、見落としやすい改正なのでご注意ください。

 貸付事業用宅地が含まれていて、その特例を使う場合は、今までどおり調整計算が必要となります。

小規模宅地の特例の概要について

各制度の詳細を説明すると、何十ページにもなってしまいます。
ここでは、概要について触れていくことにしましょう。

 郵便局舎の事業用宅地は、実務では殆ど登場しませんので、ここでのご説明は省略させて頂きます。

(1)特定居住用宅地について

 詳細な内容は、「小規模宅地の特例(特定居住用について)」をご覧ください。

この特例は、亡くなった被相続人が住んでいた土地(自宅)について、親族が住み続けたら、土地の金額を8割引きするという制度です。

例えば、つぎのような場合です。

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このように、父が亡くなり、父が住んでいた土地を母が相続した。
このような場合で、土地が1億円の場合は、つぎのように計算します。

1億円-(1億円×80%)=2,000万円

この特例を使えれば、なんと、1億円の土地が2千万円になってしまうのです!

この制度ですが、

  • 誰が土地を相続したのか?
  • 父と一緒に誰が住んでいたのか?
  • 相続した人は持ち家を持っているか?
  • 地代や家賃を払っていなかったか?

といった、細かな条件があり、これらを満たす必要があります。

良くあるパターンとしては、

  • 父が亡くなり母(配偶者)が相続した
  • 父が亡くなり同居の子供が相続した

といったケースが、最も多いと思います。

なお、この特定居住用の特例は、限度面積(適用できる面積)が決まっていて、330㎡(100坪)までとなっています。
つまり、330㎡を超える部分は、8割引きできないんです。

「あまりにも広い家は贅沢だ」

税務署はそう考えたのかもしれませんね。

(2)特定事業用宅地について

 詳細な内容は、「小規模宅地の特例(特定事業用宅地について)」をご覧ください。

父が、自分の土地の上で商売をしていた。
そして、父の死後、商売を引き継いだ息子が、土地を相続した、というパターンです。

例えば、父が自分の土地の上に建物を建て、そこで八百屋さんを営んでいたとしましょう。

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父が急死し、この八百屋さんを息子が引き継いだとしましょう。

その土地に高い相続税をかけたら、事業を続けることができませんから、息子さんも困ってしまいますよね。
ですので、このように事業(商売)に使っている土地についても、特定居住用と同じく8割引きできるんですね。

特定居住用と違うのは、限度面積が400㎡と広くなっていることです。
やはり、事業(商売)には、ある程度広い土地が必要ですから、そのような配慮を税務署もしてくれたんでしょうか。

(3)特定同族会社事業用宅地について

 詳細な内容は、「小規模宅地の特例(特定同族会社事業用宅地について)」をご覧ください。

父が所有している土地の上に、父の建物が建っている。
そして、その建物で父の会社が事業をしている。
そのような場合を考えてみてください。

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このような場合も、先程の特定事業用宅地と同じく、400㎡まで80%の減額をすることができます。

ただし、その会社の株式の過半数を身内で支配している、土地を申告期限までに役員である親族が取得する、といった細かな要件があるので注意が必要です。

なお、この特例は、

  • 地代や家賃が適正額であるか?
  • 建物の所有者は誰か?

といった条件で、使えるか使えないかが決まりますので、生前に対策をしておくことをお薦めします。

(4)貸付事業用宅地について

 詳細な内容は、「小規模宅地の特例(貸付事業用宅地について)」をご覧ください。

この特例は、土地を不動産の貸付事業に使っていた場合、200㎡まで50%引きにしよう、という制度です。

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不動産も事業だから、先程の「特定事業用宅地」の80%減額を使えるのでは?とお思いの方もいるかもしれません。

ですが、税務署は
「不動産は不労所得だから、50%しか引きません」
と考えたのかどうか分かりませんが(笑)、200㎡まで50%減額しかできません。

これは、先程の「特定同族会社事業用宅地」も同じ考え方です。
その会社の事業が不動産貸付業であれば、こちらの「貸付事業用宅地」が優先され、50%しか減額できません。

また、この特例は、あまりにも安い金額で貸していたら、事業でないとされて、小規模宅地の特例を受けられないことがあります。
(他人に貸しているのであれば、ほとんど問題はないのですが)

ですので、身内に安く貸している場合には注意が必要です。

使うための手続きは?

小規模宅地の特例を使うためには、つぎの条件をクリアする必要があります。

(1)申告期限までに遺産分割協議を終える

今までご説明してきた小規模宅地の特例は、相続税の申告期限(原則として相続開始から10ヶ月以内)に、その土地の取得者(相続する人)が決まっていることが条件です。

つまり、相続税の申告期限までに遺産分割協議を終えた人だけが使える制度なんです。

ですので、相続が開始したら、誰がどの財産を取得するのか、できるだけ早く方針を決めて、遺産分割協議書を作る必要があります。
ですが、余裕があると思っていても、相続人が多いとなかなかまとまらず、あっという間に時間が過ぎてしまう場合があります。

そのようなケースでは、つぎのような方法が考えられます。

  • 小規模宅地の対象である不動産だけ先に取得者を決める
  • 「申告期限後3以内の分割見込書」を税務署に出す

遺産分割協議は、何も、全ての財産の取得者を一度に決める必要はありません。
ですので、とりあえず、小規模宅地の特例の対象となる土地だけ、取得者を先に決めておいて、残りの預金等は、また時間をかけて取得者を決める。
そのような方法も考えられます。

また、それでも決まらない場合は、税務署に、
「何とか3年以内に遺産分割を決めます。ですので、分割が決まったら、小規模宅地の特例を使わせてください」
という用紙を出しておく方法があります。

この用紙を、「申告期限後3以内の分割見込書」といいます。
具体的なイメージは次のようになります。

申告期限後3年以内の分割見込書.PNG

ここに、分割されていない理由や、分割の見込みを書いて、相続税の申告書と一緒に提出することになっています。

ところで、たまに、他の税理士先生から、
「分割されていない理由や、分割の見込みの詳細の部分はどう書けば良いの?」
というご質問を頂く事があります。

これは、その通り、事実を書いてください。

つまり、分割されていない理由は、
「話し合いがまとまらないため」

分割の見込みの詳細は、
「3年以内を予定しております」

となるでしょう(^_^)

これ以外、書きようがありませんよね?
ですので、このように書くことになりますし、この内容で税務署に提出して大丈夫です。
(もちろん、もっと文章力がある方であれば、色々な表現が浮かぶんでしょうが・・・)

なお、遺産分割協議がまとまらない状態で3年を過ぎますと、今度は、
「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」
という書類が必要となります。

これは、調停や訴訟といった、本当に争っている状態でしか提出できません。
つまり、何とか、お互いゆずって、3年以内に遺産分割協議を終えなければ、小規模宅地の特例が使えなくなってしまうかもしれません。

くれぐれもお気をつけくださいね。

(2)申告期限までに相続税申告書を税務署に提出する

小規模宅地の特例を使うためには、申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに、相続税の申告書を税務署に提出する必要があります。

申告書には、多くの書類を付ける必要があります。
(書類が漏れていた場合は、小規模宅地の特例を受けられないことがあります)

付ける書類は、小規模宅地の特例の種類ごとによって異なりますが、一般的には次のような書類になります。

  • 戸籍謄本
    ・・・相続人であるか証明するため
  • 相続人の住民票
    ・・・一緒に住んでいたかを確認するため
  • 戸籍の附票
    ・・・住所のつながりを確認するため
  • 自宅の賃貸借契約書
    ・・・持ち家がないことの証明
  • 会社の定款
    ・・・会社の事業目的等を確認
  • 遺産分割協議書の写し
    ・・・誰が土地を相続したか確認するため
  • 印鑑証明書
    ・・・遺産分割協議書の印鑑が実印か確認するため

上記はほんの一例で、これ以外にも多くの書類が必要となる場合があります。

小規模宅地の特例についてのまとめ

小規模宅地の特例を使うことができれば、相続税を節税できることがご理解頂けたかと思います。

最近、税務署には、
「相続税申告書を自分で書きたい」
という相談が増えているそうです。

事実、私が少し前にお受けした相続税申告も、そのようなケースでした。

その方(ご長男)は、何とかご自分で相続税申告書を書こうと、何度も税務署に相談に行ったそうです。
ですが、担当した税務署員も、相続税に詳しくなく、時間だけが過ぎていきました。
(税務署員にも、会社の税金担当、個人の税金担当、相続の税金担当、といったように部門ごとに分かれています。ですので、自分の専門分野以外のことは詳しくないんですね)

申告期限まで、あと2ヶ月。
このままでは、父の自宅について、小規模宅地の特例を受けることができなくなってしまう!
それで、当税理士事務所にご相談にお見えになったそうです。

小規模宅地の特例は、税務署に提出する書類も膨大ですし、提出漏れがあると受けられなくなってしまうかもしれません。
そして、受けられないと、場合によっては数百万円~数千万年、相続税が増えてしまうかもしれません。

ですので、小規模宅地の特例については、概要をおさえて頂き、実際の計算と申告書提出は、専門家である税理士にお願いした方が安心といえますね。

 

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。

 

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