借地権とは何ですか?

質問

父(83歳)が先月、亡くなりました。
(母が10年前に亡くなってからは、父は一人暮らしでした)

父は、50年ほど前に地方から東京に上京し、いま住んでいる土地を地主さんから借り、そこに自宅を建てました。

私(45歳:男性)は長男なので、これから父の相続手続きをしようかと思っています。

先日、土地の地主さんとお付き合いのあるという、地元の不動産屋さんに相談にいきました。そうしたところ、
「あなたのお父さんは土地を借りていたので、これは借地権(しゃくちけん)という財産になって相続税がかかりますよ。」
と、アドバイスを受けました。

建物は父の名義ですので、これに相続税がかかるのは分かります。
ですが、土地は、地主さんから借りているだけで、地主さんの持ち物です。

土地を借りている方に、相続税がかかるのですか?

また、それが本当であれば、借地権という財産は、どのようなものなのでしょうか?

回答

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

地元の不動産業者様がおっしゃっていたことは本当です。

土地を借りている方は、原則として、「借地権(しゃくちけん)」という財産を持っていることになります。

今回は、借地権の概要と、どのように計算するかについて、ご説明していきたいと思います。

 

相続税理士による実務アドバイス

借地権は、どうやって計算するのか?

借地権とは、簡単にいうと、「土地を借りる権利」です。
具体的には、つぎのようなイメージになります。

借地権(1).png

土地を借りている方が持っている権利(赤色の部分)を、「借地権(しゃくちけん)」といいます。

これに対して、地主(土地の所有者)が持っている権利(青色の部分)を、「底地(そこち)」または「底地権(そこちけん)」という言い方をします。

例えば、その土地の路線価での評価額が1億円で、その土地の借地権割合が60%であれば、父上は、

「1億円×60%(借地権割合)=6,000万円」

として、6,000万円の資産(借地権)を持っていた、ということになります。

なお、借地権割合とは、税務署が
「この地域で土地を借りている方は、6割の権利を持っているだろう」
という、税務署が周辺の取引事情を見て決めた割合のことをいいます。

この借地権割合は、国税庁のホームページの路線価図から、確認することができます。

※路線価図の見方がお分かりにならない方は、下記のページを参考にしてください。

相続財産の評価(土地)(路線価図の見方について)

借地権(2).PNG

例えばですがが、上記の地域に自宅があったとします。
そこには、380Dと言う表記があります。

これの意味するところは2つあります。

  • 路線価は380千円(38万円)である
  • 借地権割合は60%である

ということです。
(アルファベットが借地権割合を表しています)

 この借地権割合は、都心であればあるほど高くなるのが通常です。

 

借地権(土地を借りている権利)に価値があるのか?

土地を借りているだけなのに、なぜ6,000万円もの価値があるのか?
また、土地を持っている方が、なぜ4,000万円の価値しか持っていないのか?
疑問に感じる方もいるでしょう。

色々な理由がありますが、一番の理由は、借地権に経済的価値がある(他人に売却できる)ということにあります。

例えば、ご長男が借地権を相続した場合(借地権は普通の財産と同じように相続できます)は、どうされますか?

そこに住み続けることもできますが、普通は、築50年以上たった老朽化した建物には住まないと思います。
また、ご自身の生活圏もおありですから、引っ越しもしたくないと思います。

地元の不動産業者様に相談に行くと、
「まずは、借地権を地主(底地を持っている土地の貸主)に買い取ってもらうよう、話しをしてみます」
と、アドバイスされるでしょう。

地主は、借地権を買い取ることにより、土地を100%自分のものにすることができるので、資金に余裕がある場合、買い取ってくれることが多いんですね

 地主が買い取ってくれない場合は、他人に売却することもできますが、地主に承諾料(許可してもらうための代金)を払わなければなりません。ですので、普通は地主に話しを持ちかけることになります。

つまり、借地権は普通の土地と同じように、資産価値があり、売却できるのです。

ですので、税務署も、借地権に相続税をかけることにしたんです。
そのため、父上は6,000万円の財産(借地権)を持っていますから、原則として相続税がかかります。お気をつけください。

 

借地権の法律

土地を貸し借りする際は、トラブルが予想されます。
そのため、色々な法律が作られました。
大まかな流れは、つぎのようになります。
(この他にも細かな法律改正がありましたが、説明の都合上、省略しています)
借地権(3).png

当初は、民法(民間の取引全般の法律)という法律で、土地の貸し借りを定めていました。

 民法では、借地権という言い方をせず、賃借権(ちんしゃくけん)という呼び方をします。

ですが、借主が全くといって良いほど保護されていませんでしたので、地主から嫌がらせをうける事例が多く発生しました。
そのため、大正10年に借地法が出来ました。
借地法には、色々なことが決められているのですが、一番の特徴は、借地権の定義(借地権は建物所有を目的とする)、契約期間の定め(30年以上等)といった点です。

この契約ですが、この時点では法定更新制度(契約が終わった後に、自動的に再契約できる制度)はありませんでした。
(地主へ建物を買い取るよう請求はできますが、現在のような法定更新制度はありませんでした)

その後も、昭和16年の借地法改正といった細かな改正が続きますが、基本的には借主の権利がどんどん強くなり、貸主(地主)の権利は、どんどん弱くなっていきました。

これでは、誰も土地を貸さなくなる、ということで、平成3年に借地借家法(実際の適用は平成4年8月1日契約開始分より)ができ、色々な契約形態を選べるようになりました。
細かな内容は省略しますが、昔の借地法よりも、更新後の契約期間が短くなっているのが特徴です。

ところで、借地借家法ができる前に契約した分については、昔ながらの借地法の規定によることになっています。
ですので、次回、賃貸借契約を更新する際は、、新しい借地借家法更新期間(初回更新時20年・2回目更新時10年)ではなく、昔の借地法の更新期間(30年または20年)になります。

借地権に関する法律は、その時代の様々な経済活動、時代背景によって、改正されていきました。

明治時代から戦前までは、戦争特需で都市部に労働者が流入し、戦後から高度経済成長期も、都市部に大量の出稼ぎ労働者が入って来ました。

これらの労働者は、土地を地主から借り、これに住宅を建てて住んでいました。

当初は地主の権利が強く、契約期間が過ぎると借地人が追い出される事例が頻発しました。
そのため、借地権の法律を次々に改正し、借主を保護することにしました。

ですが、今度は、逆に借主を保護しすぎてしまったので、地主が土地を貸さなくなってしまいました。
そのため、新しく借地借家法を作り、行き過ぎた借主保護を改めることにしたのです。

今現在、建物の敷地を借りている方のほとんどが、昔の借地法の法律が適用されます。
よって、30年または20年の更新ごとに、地主に数十万円~数百万円の契約更新料を払わなければなりません。
ですので、有効活用していない借地権は、何とかしなければなりません。

 

相続した借地権をどう処分するか?

最初のご説明のとおり、借地権には相続税がかかります。
ですが、それだけでなく、契約更新ごとに更新料がかかり、地主とトラブルになったら解決費用(裁判費用等)もかかるかもしれません。

ご質問のケースですが、借地権を相続しても住まわないようでしたら、次のような選択肢があると思います。

  1. 建物を他人に貸して家賃をもらう
  2. 借地権を建物ごと地主に買い取ってもらう
  3. 借地権を他人に売る(地主の承諾が必要)

一般的なのは、やはり2.の「借地権を建物ごと地主に買い取ってもらう」になります。
ただし、地主様とのご関係(仲が良いか悪いか)、地主様に買い取る資金があるのか、といった問題があります。

ちなみに、この1億円の土地を地主に買い取ってもらう際は、本人同士の交渉によることになりますので、いくらであっても構いません。
ですが、実務上は、税務署が決めた路線価や借地権割合をたたき台(スタートライン)にして、価格を決めることになります。

私が見ている事例で多いのは、つぎのような計算です。

1億円÷0.8=125,000,000円

路線価で1億円の土地でしたら、まずはこれを「0.8」で割り戻します。
なぜ、「0.8」なんでしょうか?
路線価は、理論上は、時価(実際に売買されている金額)の約8割になっている、と言われています。
ですので、0.8で割り戻すことにより、理論上の売買金額を出すのです。

そして、この「125,000,000円」を、貸主(地主)の権利割合と、借主の権利割合とで按分して買取金額を決めます。
この際も、税務署が決めた「借地権割合」をたたき台(スタートライン)にします。
ですので、つぎのような計算をします。

125,000,000円×0.6(借地権割合)=75,000,000円

要するに、
「私は、この土地の6割の権利を持っているんだから、その値段で買い取ってください」
ということです。

ですが、そんなに上手くいきません。
地主側がどうしても欲しいのであれば、この借地権割合(0.6)で買い取ってくれるのでしょうが、実務上は、貸主・借主の痛み分けということで、0.5前後で折り合うことも多いです。

借地権は、相手(地主)あっての財産なので、色々な制約があります。
(勝手に他人に売ることができない、契約更新料がかかる、といったようにです)

ですので、適正な金額で買い取ってくれるのであれば、それに越したことはありません。
自分と相手との力関係、不動産業者様のアドバイス、これらを総合的に考えて、できるだけ現金化(買い取ってもらう)できるようにしてみましょう。

今回は、借地権の概要をご説明してみました。
借地権は、突き詰めると色々と難しいです。
税理士は税金計算だけを考えますが、できれば、その後の資産運用まで考えて、お手伝いをすべきです。
それには、ある程度の不動産の知識も必要なんですね。
(相続税を取り扱う税理士には、幅広い知識が求められますね)

 

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。

 

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