期限までに相続税の申告をしないと、どうなるのですか?(無申告・期限後申告について)

質問

6ヶ月ほど前に父が亡くなりました。葬儀は長男である私が執り行い、無事、四十九日法要も終えました。
家族構成は、つぎのとおりです。

  • 父(被相続人)
  • 母(配偶者)
  • 長男(子)
  • 長女(子)

父の遺産は、自宅(土地と建物合計で約4,000万円)と、預金500万円程度で、合計すると約4,500万円程度になります。
相続税について心配になり、税務署に相談に行ったところ、税務署の方が
「お父様の遺産は、相続税の基礎控除以下だから、相続税はかからないでしょう。あなたの家族構成ですと基礎控除は4,800万円になります」
とのことでしたので、相続税については何も手続きしないまま、今日まで来ました。

ところで、最近、母が父の遺品を整理していたところ、タンスの裏から、私たちが知らなかった預金通帳と、いくつかの株券が見つかりました。
(具体的には、預金通帳と株券を合わせると、約3,000万円程度になりそうでした)

見つかった預金と株式をたしますと、遺産の合計は約7,500万円になってしまいます。
そうしますと、税務署の方がおっしゃっていた基礎控除(4,800万円)を超えてしまいます。

相続税の計算や、税金の納付期限は、相続があった日から10ヶ月以内と聞きました。
もし、期限までに何もせず、申告期限から遅れてしまうと、どのようなことになってしまうのでしょうか?

回答

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

ご心配は、ごもっともです。

お亡くなりになった方の遺産が、相続税の基礎控除(ご質問者様の家族構成ですと4,800万円になります)を超えますと、原則として相続税の申告・納付が必要となります。

期限までに、「相続税の申告」と「相続税の納付」をしませんと、税金が余分にかかってしまう可能性があります。
また、罰金がついてしまうことがあるかもしれません。

「相続税の申告」とは、相続税の計算をして、税務署に計算結果(申告書)を提出することです。
「相続税の納付」とは、税務署に提出した計算書類(申告書)に書いた税金を、税務署に納めることを言います。
税理士は、この2つを併せて、「相続税の申告をする」と呼んでいます。

両方のお手続きの期限は相続開始日から10ヶ月以内となります。
まだ時間がありますので、早めにご準備されることをお勧めします。

相続税理士による実務アドバイス

相続税の申告は、相続が開始した日から10ヶ月以内に行う必要がある。
これは、皆さんもご存じだと思います。

では、遅れた場合は、どのようなペナルティー(罰則)があるのでしょうか?

私自身、とある事情で、遅れて税務署に相続税申告した経験もございますので、このあたりは、他の税理士先生よりも詳しくご説明できるかと思います。
(本当は、遅れないことが一番なのですが・・・)

順番に確認していきましょう。

1.相続税の申告が遅れた場合・申告しない場合の問題点

相続税の申告は、相続開始日(お亡くなりになった日)から10ヶ月以内です。
この期限までに、申告しない(税務署に計算結果をまとめた申告書を提出しない)、納付しない(相続税を納めない)場合は、罰則があります。

具体的には、税金(相続税)が多くなってしまいます。

ところで、税金は、次の2つに分けることができます。

  • 本税(ほんぜい)
  • 加算税・延滞税(かさんぜい・えんたいぜい)

本税とは、本来払わなければならない税金です。いわば、税金本体です。
相続税で言えば、本来士支払わなければならない相続税というところでしょうか。

加算税・延滞税とは、いわば罰金です。
本来の期限までに書類を提出しない、税金を納めない、といったことについてかかる税金です。

この、本税と加算税・延滞税の関係を踏まえて、ご説明していきたいと思います。

 

(1)申告書を提出しないことについての罰則(無申告加算税)

相続税に限りませんが、税金の申告書(計算結果を書類に書いて税務署に報告する、いわば税金計算報告書)を期限までに提出しませんと、原則として無申告加算税という罰金がかかります。
(例え、1日遅れただけでも、原則として無申告加算税がかかります)
この場合、次のケースごとに、罰金の両立が変わります。

税務署に言われる前に自分から提出した場合

申告期限(原則として相続開始日から10ヶ月以内)までに相続税申告書を提出しない場合で、税務署に言われる前に自分から提出した場合は、原則として5%の無申告加算税(罰金)がかかります。

ですので、本来払うべき相続税(本税)が500万円の場合、
「500万円×5%=25万円」
となり、いきなり25万円の罰金が発生することになります。

 ただし、申告期限までに相続税を納めている、申告期限から1ヶ月以内に税務署の指摘前に申告書を提出した、といった一定の条件を満たせば、無申告加算税がかからない場合がありますが、これはあくまで例外です。

税務署に言われてから提出した場合(税務調査等を予知した場合)

税務署に言われてから提出した場合は、無申告加算税が大幅に増えることになります。

具体的には、税務署から、相続税の申告書が出ていない旨の連絡があった場合です。
そうなりますと、無申告加算税(罰金)が、いきなり15%~20%に跳ね上がります。

(50万円までは15%、50万円を超える部分には20%がかかります)

相続税が500万円の場合は、

  • 50万円×15%=75,000円
  • (500万円-50万円)×20%=900,000円
  • 75,000円+900,000円=975,000円

となり、975,000円にもなってしまいます。

 税務調査等が来ることを予知(予想)して期限後に申告書を提出した場合は、原則として、この高い方の税率になります。ですが、何が予知になるかは、税務署員によって判断が分かれることがあるようです。ですので、税務署から接触(お電話等)があった時は、無申告加算税がどのようになるのか、確認してみた方がよいかもしれません。(一番良いのは、期限内にきちんとお手続きすることなんですが・・・)

ですので、相続税の申告義務がある方(=基礎控除額を超える方)は、税務署に言われる前に相続税の申告書を提出することをお勧めします。

たまに、他の税理士先生からご質問を頂く事があります。
「期限から遅れても、申告書を提出しているんだから、無申告加算税はかからないのではないか?」

確かに、(期限から遅れても)申告書を提出していますので、無申告ではないのですが、期限から1日でも遅れますと、原則として無申告加算税という税金がかかります。
(あくまで、申告期限時点において、無申告であった、という考え方なんですね・・・)

ですので、無申告加算税には、お気をつけください。

 

(2)相続税を納めないことについての罰則(延滞税)

相続税の申告書を、申告期限(原則として相続開始日から10ヶ月以内)に提出したとします。
ですが、相続税を期限までに納めない(または納められない事情があった)とします。

税金を期限までに納めない場合は、つぎの利率による罰金(延滞税)がかかります。

  • 期限から2ヶ月まで・・・年3%~4%前後
    (銀行金利に連動して変更されます)
  • 期限から2ヶ月を超える部分・・・年約9%~10%前後

この利息は、事業の経費にもならない、いわば捨て金ですので、期限までにきちんと払わないと損をしてしまいます。
お気をつけください。

なお、延滞税は、こちらで計算する必要はありません。、
きちんと相続税(本税)を納めた後、税務署が計算して、延滞税の納付書を自宅に送ってくれるからです。

また、延滞税の納付が遅れても、延滞税に延滞税はつきません
ですが、延滞税が遅れますと、税務署も差し押さえ手続きをするかもしれませんので、きちんと納めましょう。

なお、相続税をどうしても納められない場合は、物納(ぶつのう)や、延納(えんのう)という手続きを検討することになります。
物納や延納について、詳しくお知りになりたい方は、つぎの記事が参考になります。

「物納のご相談(当サイト内の記事)」

 

2..申告期限までに遺産分割ができなかった場合の問題点(本税が高くなる可能性あり)

相続税の申告期限(原則として相続開始日から10ヶ月以内)までに、遺産分割(誰がどの財産をもらうか)が決まらない場合は、本税(相続税本体)が高くなってしまう可能性があります。

何故でしょうか?
それは、相続税が安くなる、つぎの特例が使えなくなってしまうからです。

  • 配偶者に対する相続税額の軽減
  • 小規模宅地等の特例

配偶者に対する相続税額の軽減とは、配偶者が相続した財産のうち、一定額までは相続税をかけない、というとても有利な特例です。
ですが、相続税の申告期限までに遺産分割を終えていませんと、この特例を使うことができません。
(配偶者に対する相続税額の軽減については、こちらの記事「配偶者が財産を相続した場合は、相続税が安くなると聞きましたが?」が参考になります)

また、小規模宅地等の特例も使うことができません。
小規模宅地等の特例とは、住んでいる土地、貸している土地といった、特別な事情がある土地について、相続税を安くしてくれる制度です。
これも、誰が財産を相続するか決まっていないようであれば(つまり遺産分割の話し合いが済んでいなければ)使うことができません。

上記のとおり、期限までに遺産分割協議が終わりませんと、相続税(本税)が高くなってしまいます。
また、本税が高くなると言うことは、罰金も高くなると言うことです。
(罰金は、本税を基準として計算されるため)

ただし、申告期限までに、相続税の申告書と一緒に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておき、遺産分割が決まった日から4ヶ月以内に「更正の請求(特例を使わせてくださいという書類)」を提出すれば、これらの特例を使うことができます。

ですので、できるだけ期限までに遺産分割協議を終えるようにする。それが難しいようであれば、申告期限後3年以内の分割見込書を提出する、といったお手続きが必要です。

 期限までに遺産分割協議を終えていない、相続税の申告書と分割見込書も提出していない。そのような場合でも、「期限後申告書+分割見込書」で特例を使える可能性があります。ですが、これは最終手段ですので、そのようにならないよう、きちんとスケジュールを建てて進めましょう。

 

3.相続税の時効との関係

ここまでのご説明で、
「でも、税金には時効があるのでは?時効が過ぎれば相続税の申告や納付をしなくても大丈夫では?」
と、お考えになる方も、いらっしゃるでしょう。

おっしゃることは、ごもっともです。
税金の時効は、原則として申告期限から5年です。
(ただし、本当に悪い脱税行為をした場合は、5年ではなく7年になります)

相続税の申告期限は、原則として相続開始日(お亡くなりになった日)から10ヶ月ですので、正確な時効期限は、

「相続開始日+10ヶ月+5年」

になります。

ですので、普通の方は、お亡くなりになって5年と10ヶ月たてば、相続税について税務署から指摘されることはないわけです。
これを聞いて、皆さん、どう思われるでしょうか?

私は、
「5年間も、税務署から電話があるかもしれない、とビクビクして暮らすより、正々堂々と税金を払った方が、精神衛生上、良くないですか?」
と言いたいです。

人間、ストレスが貯まると、色々な病気になってしまいます。
(ガン、糖尿病、精神的な病い・・・、色々あると思います)

払うものは、きちんと払った方が、健康的な生活につながります。
ぜひ、相続税については、期限までに申告・納付することをお勧めします。

 ただし、贈与税の時効だけは、他の税金と違って6年になります(贈与税の申告をしない方が多かったため、5年から6年に伸ばされました)
お気をつけください。

4.万が一、期限までに何もしなかった場合は、どうすれば?

期限までに、

  • 相続税の申告(相続税の計算結果を税務署に提出すること)
  • 相続税の納付(相続税を税務署に払うこと)

上記2つができなかった場合、または忙しくて忘れてしまった場合、どうすれば良いのでしょうか?

その場合は、今からでも遅くありません。
税務署から、連絡が来る前に、自分の方から、相続税の申告書を提出し、相続税を納付しましょう。
そうすることにより、少なくとも、無申告加算税(罰金)の割合は、少なくすることができます。

また、(今回のご質問では申告期限を過ぎていませんでしたが)、相続税の申告期限を過ぎた後に、財産が見つかることもあるでしょう。
そのような場合、こちらに悪意はないのですが、税務署から指摘された後に、相続税の申告・納付をした場合、原則として無申告加算税が高くなってしまいます。

 

私自身、相続税の申告書を遅れて提出したことがあります。
(守秘義務の関係で、若干話しをぼかします)

知り合いの弁護士先生より、相続税申告のご相談を頂きました。
お聞きしたところ、なんでも、遺産分割の話し合いが上手く進まなかったので、今日までかかってしまった、とのことでした。

ご相談を頂いた段階で、既に申告期限から2ヶ月を経過していたので、税務署から納税者(相続人)に、
「相続税の申告義務があるんじゃないんですか?あるんなら、早めに申告してください!」
というお電話が、複数回、かかってきているとのことでした。

ですが、弁護士先生から頂いた遺産分割協議書の日付を見たところ、私は安心しました。
それは、「申告期限までに遺産分割が終わっていた」からです。

相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わっていない場合は、原則として、小規模宅地等の特例(今回は住宅についての特例でした)を使うことができません。
ですが、申告期限までに遺産分割が終わっていれば、申告期限から遅れて申告書を提出しても(これを「期限後申告」といいます)、小規模宅地等の特例を使うことができるのです。
そうすると、グッと相続税が安くなります。

期限後申告ではありますが、小規模宅地等の特例を使って申告しました。
当然、税務署からダメだというご連絡はありませんでした。
(ただし、もろもろの罰金はかかりました。これは致し方ありませんが・・・)

たまに、期限後申告では、配偶者に対する相続税額の軽減、小規模宅地等の特例を使うことができないとのご説明をされる税理士先生もいらっしゃいますが、期限後でもあきらめないで、きちんと事実と法律を確認することが大切です。

 

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。

 

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