贈与契約書の作り方は?

質問

私(82歳:男性)には、2人の子供(長男・長女)と、孫4人がおります。

相続税対策として、顧問の税理士先生より、子供と孫に贈与を勧められました。
ですが、その税理士先生とは、年に1回だけ会う約束のため、細かな方法については教えてもらえませんでした。
(贈与税の申告書作成のみ、税理士先生にお願いする形となっております)

先日、都内の大型書店で、贈与関係の書籍コーナーが出来ていたので、いくつかの書籍を立ち読みしたところ、
「正しい贈与をしないと、税務署からダメと言われてしまう」
と書いてありました。

具体的な内容は忘れてしまいましたが、たしか、「贈与契約書」をきちんと作りましょう、といった内容が書かれていたと思います。

子供や孫に贈与する際は、きちんと贈与契約書を作った方が良いのでしょうか?

回答

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

贈与契約書をきちんと作った方が良いと思います。

単に「贈与する」といっても、色々と注意する点があります。

※詳しくはこちらの記事、贈与する際の注意点をご覧ください。

その注意点の1つに、「贈与契約書を作成する」といったものがあります。

  • なぜ贈与契約書を作った方が良いのか?
  • 贈与契約書の具体的な作り方は?
  • 確定日付は必要か?

これらについて、簡単にまとめてみました。
ご参考にしてみてください。

 平成29年時点の法律を基に記事を作成しています。制度改正や細かな条件があるため、実行前に必ず税理士等の専門家にご相談ください。

相続税理士による実務アドバイス

なぜ贈与契約書を作った方が良いのか?

こちらの記事「贈与する際の注意点」にも書かせて頂きましたが、贈与契約は、口頭(=つまり口約束)でも成立します。
ですが、それでは税務署が認めない可能性があります。

また、贈与税の税務調査は、普通は贈与してから直ぐには来ません。
贈与して、贈与者が亡くなって、その贈与者の死亡時の相続税調査に併せて行われることが多いです。

そうすると、贈与してから数年後~10年後、場合によっては数十年後に行われることもあり、その時に初めて贈与が否認される(=贈与していないと言われる)ことが多いです。
そのため、贈与した時点での両者(贈与者と受贈者)の意思をきちんと書面に残すことにより、きちんと贈与が行われた証明になる。そう思います。

贈与契約書には、次の事項を記載します。

  • 贈与者(あげた人)の氏名・住所
  • 受贈者(もらう人)の氏名・住所
  • あげる財産の具体的な内容・金額
  • 贈与契約をした日付

贈与契約書に、贈与者・受贈者それぞれが自署(サイン)と押印をすることによって、両者の意思を税務署に証明できることになります。

また、贈与契約書は、普通は、贈与税申告書に添付します。
というのも、税務署がそうしてください、と言ってるからなんですね。

税務署が税理士向けに作成している書類のなかに、贈与税申告書にこれらの書類を添付してください、という文書があります。
その中に、「贈与を受けたことを証する書類」として、贈与契約書の写しや、登記事項証明書(不動産贈与の場合)を申告書に添付してください、というお願いがあるんですね。

税務署も、贈与契約書がありませんと、本当に贈与したかどうか分かりませんし、納税者(または税理士)の方も、最初から贈与契約書を付けて出せば、後日の税務調査時に、税務署の方に、
「贈与契約書を出してください」
と言われることも少なくなると思います。

ですので、きちんと贈与契約書を作成し、贈与税申告書に添付した方が良いと思います。

 

贈与契約書の作り方は?

前置きが長くなりましたが、こちらが、贈与契約書の見本になります。

 ここでの書式は、あくまで参考書式になります。これ以外の書式で作成しても、必要な情報(贈与者・受贈者の氏名住所、日付、贈与財産等)がきちんと入っていれば、どのような書式でも構いません。

 

贈与契約書

贈与者 鈴木一郎 (以下「甲」という)は、受贈者 鈴木花子 (以下「乙」という)と、本日、つぎの贈与契約を結んだ。

 第1条 甲は金銭 100万円 を贈与することとし、乙はこれを受諾した。

 第2条 甲は第1条の金銭を平成29年10月31日までに、乙の下記口座に振り込みものとする。

「振込口座」
  ほしぞら銀行うちゅう支店 普通口座 口座番号1234567 

上記契約が成立したので、これを証するため、本契約書を2通作成し、甲乙が各1通保管するものとする。

  平成29年10月25日

贈与者:甲  東京都新宿区新宿1-1-1 

         鈴木 一郎   ㊞  

 受贈者:乙  東京都新宿区新宿2-2-2 

          鈴木 花子   ㊞  

このように記載するのですが、いくつか注意点があります。

(1)最低限、名前は自署する

最初に申し上げたとおり、贈与契約書の作成目的は、
「贈与者・受贈者の意思を書面に残しておく」
ということにあります。

そのため、本来であれば、証拠能力?を高めるためには、全文を自署で記載するのが良いのかもしれません。
ですが、同じものを2通作成するわけですし、結構大変です。

そこで、実務上は多くの税理士が、最低限、両者の名前部分は自署で記載するようにしています。
そうすれば、例え、贈与者である鈴木一郎様がお亡くなりになっても、筆跡で、贈与の意思があったことの証明になるからです。
(もちろん、この贈与契約書があったからといって、それだけで無条件に贈与が成立している訳ではありませんが・・・)

さらには、日付と住所欄も自署であれば、なお良いと思います。
本人の意思が、より明確になると思いますので。

ちなみに、私(=石橋税理士)は心配性なため、他の箇所も自署でお願いしている部分がありますが、こちらはまた別の機会にご説明させて頂きます・・・。

ですので、最低限、お名前部分は、ご本人の自署(自筆のサイン)でお願い致します。

(2)実際に贈与を実行する

上記の贈与契約書を作ったら、それだけで安心してはいけません。
きちんと、契約書にあるとおり、期日までに贈与を実行(=銀行振込)をしてください。

振込時の注意点は、振込票(または払出票)を、贈与者本人が自署するということです。

お客様の贈与税申告書を作成する際、振込票も一緒にお預かりすることがあります。

(かなり昔の話しですが)暇な時期に、払込票と贈与契約書にある贈与者本人の自署とを比較して、同じ筆跡かを検討したことがあります。
結果的には・・・、「同一人物の筆跡」でした(^_^)

本人の筆跡は、(筆跡鑑定の)素人の私であっても、結構分かります。
例え、数字だけであってもです。
同じ「700,000円」という記載であっても、7を崩して書く方、タテに書く方、それぞれです。
ですから、本人が書いたかそうでないか、すぐに分かってしまいます。
払込票は贈与者ご本人が書くべきものですから、きちんと、そのようにしてくださいね。

また、不動産の贈与であれば、真ん中の贈与財産の記載が次のようになります。

第1条 甲は乙に対し、本日付でつぎの不動産(以下「本件不動産」という)を贈与することとし、乙はこれを受諾した。

 所在:東京都新宿区新宿

 地番:一丁目一番(地番表記になります)

 地目:宅地

 地積:111.11㎡

第2条 甲は乙に対し、平成29年10月31日までに本件不動産を引き渡し、かつ、同日までに所有権移転登記を行う。

第3条 本件不動産に関する公租公課は、本件不動産引き渡しまでを甲の負担、引き渡し日以降を乙の負担とする。

不動産贈与のポイントは、きちんと所有権移転登記を行うということにあります。

20年~30年ほど前に、
「贈与契約書だけ作って、登記しなければ、税務署にバレないのでは?」
と考えた税務専門家の方がいらっしゃいました。

具体的には、公正証書で贈与契約書を作成し、登記をしなかったんです。

 公正証書とは、公証人(=元裁判官等の立派な方々)が作成した、きちんとした証明能力を持った書類です。

これは、裁判等でも争いましたが、最終的には税務署にダメといわれました。
当たり前ですよね。普通は、財産をもらったら、すぐに名義を変更するはずですから。

ですので、不動産の贈与は、きちんと登記をしてくださいね。

※ 司法書士先生にお願いすると、贈与契約書まで作ってくれるので、とてもラクですよ。

 

確定日付は必要か?

最後に、確定日付(かくていひづけ)について考えてみたいと思います。

確定日付とは、公証人役場に行って押してもらう日付が入ったハンコです。
(具体的には、このようなイメージです。

※ この書式はサンプル用に、弊事務所が架空の名前で作成し、確定日付をもらってきたものになります。お客様のデータではありませんので、ご安心ください。

贈与契約書-4.PNG

このように、贈与契約書に赤いハンコが押されます。

そもそも公証人役場とは、どんなところでしょう?

公証人役場とは、公証人がいる役場です。
(当たり前ですね・・・)

公証人とは、元裁判官といった、法律のプロであり、かつ、嘘をつかない(であろう)、立派な方々です。
公証人役場に、贈与契約書を持って行くと、公証人が内容をチェックし、問題がなければ「確定日付」を契約書に押してくれます。
(基本的には、事前予約は必要ありません。空いていれば5分~15分程度で終わります)

分かりづらいのですが、この赤いハンコには、「公証人の氏名」と「日付」が漢字で押されています。

この確定日付ですが、
「今日現在、この贈与契約書が存在した」
という証明にしかなりません。

※ 贈与契約書の内容が正しいのか、契約書どおりきちんと贈与が実行されているか、といった証明にはなりません。

ですので、確定日付の意味は、ただ一点、
「本日現在、この贈与契約書が存在したのか(=つまりバックデートで書類を作成していないか)」
という証明だけになります。

この確定日付。本当に必要なのでしょうか?
個人的な意見ですが、名義変更が(対外的に)確認できる財産は不要で、名義変更が確認できない財産は必要と思っています。
具体例を挙げると、つぎのようになると思います。

※ これが絶対というわけではありません。詳しくは税理士等の税務専門家に相談しながらお進めください。

(1)名義変更が確認できる財産

例えば、最初に挙げた金銭贈与は、銀行振込で贈与の事実が証明できます。
贈与者(あげた人)の通帳の摘要欄には、受贈者(もらった人)の名前が印字されますし、受贈者の通帳には贈与者の名前が印字されます。
さらには、銀行の振込票にも、贈与者が自署し、さらには銀行の受付スタンプも押されます。
ですので、対外的(特に対税務署)には、名義変更を証明できるでしょう。
なので、個人的には確定日付は不要と思っています。

また、不動産を贈与される方もいらっしゃるかもしれません。
不動産の贈与は、きちんと登記しましょう、と先程ご説明しました。
登記すれば、法務局に備え付けられている登記簿謄本の所有者欄(甲区)の名前が書き換わります。
さらに、書き換わると、その情報が税務署に自動通知されるので、安心?ですね。
これも、登記することによって、対外的に贈与したことを証明できますので、この場合も確定日付は不要だと思います。

(2)名義変更が確認できない財産

名義変更が確認できない財産とは何でしょう?
代表的なのは、「同族会社(身内同士の会社)の株式」です。

この株式を贈与すると、つぎの書類の名義が書き換わります。

  • 法人税申告書の別表2(株主一覧)
    ・・・毎年、税務署に提出している
  • 株主名簿
    ・・・会社で保管している

贈与契約書、(譲渡制限がある会社は)臨時株主総会議事録等を作成して、株式を贈与し、上記に記載の株主氏名を書き換えることになります。
ですが、先程の銀行振込や、登記手続といった、いわば公的な手続きを踏まないで贈与することになるので、ちょっと不安になります。

そこで、贈与契約書等に確定日付を押してもらい、
「バックデート(=日付を遡って後付けで書類を作成すること)はしていません!」
という証明をするんです。

もちろん、確定日付があるから絶対安心という訳ではありませんし、確定日付がないから大ピンチになる、といったものでもありません。
贈与されているかどうかは、総合的に考えるので。

ですが、後々問題になりそうだな・・・。
そんな場合は、確定日付をおしてもらった方が良いかもしれませんね。

 

贈与契約書の作り方、問題になりそうな点について確認してきました。
税理士先生をつけずに贈与されている方にとって、また、税理士先生から細かなアドバイスを頂いてない方は、この記事を参考に、色々と見直してみてください。

 

本記事に関する電話での無料相談はお受けしておりません。予めご了承ください。

 

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