贈与する際の注意点について

質問

私(82歳:男性)には2人の子供(長男・長女)がおります。

長男・長女にはそれぞれ子供(私にとっては孫)が全部で4人おり、それぞれ家から独立しております。
(孫は全員、会社員をしております)

ところで、私も若くはありませんので、私が元気なうちに、子供や孫に遺産を残してあげたいと思っています。
また、少しずつ遺産を贈与した方が、相続税の節税にもつながると聞いたことがあります。
具体的には、つぎのような財産の贈与を考えております。

  • 現金(生活資金等のため)
  • 自動車(私が乗らなくなったため)

財産を贈与する際に、何か注意する点はありますか?

回答

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

財産を贈与する際は、次の点に注意してください。

  • 贈与者と受贈者の意思確認
  • 贈与契約書の作成
  • 贈与の履行

極端な話し、この世の中に税務署がいなければ、いつでも、どこでも、だれでも、自由に贈与してもいいんです。
ですが、それを認めてしまうと、税務署は税金をとれなく困ってしまいます・・・。

ですので、きちんと手順を踏んで、税務署に認められるような贈与にしましょう。

 平成29年時点の法律を基に記事を作成しています。制度改正や細かな条件があるため、実行前に必ず税理士等の専門家にご相談ください。

相続税理士による実務アドバイス

贈与がきちんと成立していれば、税務署も「贈与されていないですね」と指摘することはできません。
では、贈与が成立しているとは、どのようなことを言うのでしょうか?

贈与とはなんでしょう?

贈与税に限らず、日本の税金は、民間人同士が自由な取引をした結果について、税金をかけることになっています。
(個人事業で利益が出たら所得税、贈与したら贈与税といった具合にです)

では、質問です。
「これって贈与されているの?されていないの?」
と、悩むことがありませんか?
(税務署も同じく悩みます)

では、迷ったらどうすればいいのでしょうか?
その場合、民間人同士の取引について決めている「民法(みんぽう)」によって判断するのが基本となっています。

民法は膨大な条文数になり、もちろん、贈与についても書かれています。

民法第549条

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

つまり、民法では、

  • 贈与者(あげる方)
    「財産をあげる」と意思表示する
  • 受贈者(もらう方)
    「財産をもらう」ことについて受諾する

上記が成立すれば、贈与が成立するといっています。
何か、とっても簡単な話しで、注意することなんてない。そう思いませんか?

ですが、ここで注意頂きたいのは、黄色の部分の
「相手方が受諾をすることよって・・・」
という部分です。

贈与する際は、だいたいが、贈与する方が
「贈与する!」
と言い出します。

ご質問者様のケースでは、82歳のお父上が、
「子供達に贈与する!」
と切り出すでしょう。
これは問題ありません。

一番問題になるのは、受贈者(もらう方)が、
「ボクは財産をもらった!」
という認識があるかどうか、ということなんですね。
(税務署もここを必ず確認します)

たまにあるのですが、高齢のお爺さまが、お孫さん名義の通帳に、毎年せっせと100万円、200万円贈与しているケースです。
この場合の多くが、お孫さんの通帳がお爺さまの手元にあり、お孫さんが自由に使えない状態になっています。
この場合は、贈与が成立していません。
なぜなら、お孫さんには財産をもらったという認識がないからです。

ですので、贈与する際は、受贈者(もらう方)の意思確認が大切です。
具体的には、贈与契約書を作成し、両者の意思を書面に残し、後の税務調査に備える必要があるでしょう。

 

贈与が成立するポイントとは?

税務署の指摘がないよう、きちんと贈与を成立させるためには、どうすれば良いのでしょうか?
次のポイントを実践することが大切です。

  1. 贈与契約書を作成する
  2. 実際に贈与を実行する
  3. もらった財産はもらった人がきちんと管理する
  4. 実際に使ってみる
  5. 贈与税を払う

 税務署は、どれか1つを見るのではなく、これら全てを総合的に判断します。ですので、この考え方を参考にしてみてください。

1.贈与契約書を作成する

贈与のルールを決めている民法には、贈与契約書を作れとは書いていません。
ですので、贈与契約書なんて、本来は作る必要はありません。

ですが、問題は相続税の税務調査の時です。

今回のご質問者様のケースでは、例えばですが、今年贈与し、5年後に父上が亡くなられたとしましょう。
その場合は、相続税の税務調査は、通常ですと、贈与してから6年後~8年後くらいに来ることになります。

さきほど、贈与は「贈与者(あげる方)」と、「受贈者(もらう方)」の両方の意思があって、初めて成立すると説明しました。

これは当たり前なのですが、相続税の税務調査があったとき、税務署員は、天国にいるお父上の意思を確認することができません。
最悪、贈与が成立していないとされる場合も、あるかもしれません。
お父上の意思を確認する唯一の方法が「贈与契約書」になるんですね。

 ただし、銀行振り込みで贈与した場合は、振り込み手続きは父上本人しかできないはずですから、振込用紙の父上の筆跡等から、贈与する意思の証明になるかもしれません。

ですから、財産を贈与する際は、きちんと贈与契約書を作成する。
そして、贈与者、受贈者両方の自筆での署名押印をする。
これが大切となるんですね。

なお、贈与契約書の具体的な作り方は、つぎの記事を参考にしてみてください。

「贈与契約書の作り方は?

 

2.実際に贈与を実行する

これは当たり前のことなんですが、贈与契約書を作成するだけではダメです。
実際に贈与財産を相手に引き渡す必要があります。
また、その証拠も残す必要があるでしょう。

(1)お金の贈与の場合

お金であれば、相手に渡す必要があります。

現金の手渡しの贈与では形が残りませんので、お金の贈与は「銀行振込」がベストです。
銀行振込であれば、もらったお子様の通帳の摘要欄に、お父上の名前が表示され、お父上から贈与されたと一目で分かります。
もちろん、銀行の振込票は、お父上自身で記載されてください。
(お子様が勝手にやったと、税務署に誤解されないようにです)

(2)不動産・自動車の場合

これらの財産は、名義が役所に登録されています。
不動産であれば法務局に。自動車であれば陸運局にです。

これらの財産を贈与されたのであれば、名義をきちんと書き換えておくことが大切です。
特に、不動産の贈与は、必ず名義を変更しておいてください。

以前、贈与契約書を作成しさせすれば、贈与は成立すると指導していた会計士の先生がいたそうです。
なぜ名義変更しないのか?名義変更すると、法務局の登記簿謄本の所有者欄(甲欄)が書き換わり、税務署に贈与したことがバレてしまうからという理由です。

これは、もちろん、税務署にも裁判所にもダメと言われました。
ですので、不動産の贈与は、必ず名義変更(登記)してください。

なお、税務署も考えていて、次のような通達があります。
(一部省略して掲載します)

(財産取得の時期の特例)

1の3・1の4共-11 所有権等の移転の登記又は登録の目的となる財産について贈与の時期を判定する場合において、その贈与の時期が明確でないときは、特に反証のない限りその登記又は登録があった時に贈与があったものとして取り扱うものとする。

要は、不動産の贈与は、必ず名義変更してね!ということになっていますので、お気をつけください。
(自動車も同じく、贈与されたら名義変更をお願いします)

3.もらった財産はもらった人がきちんと管理する

当たり前のことですが、贈与された財産は、受贈者(もらった人)の財産です。
ですので、もらった人がきちんと管理してください。

一番問題となるのが、預金です。
それも、お子様名義やお孫さん名義の預金です。

先程、よくあるパターンとして、お爺さまの手元にあるお孫さん名義の預金、ということをご説明しました。
これでは、お金をもらったはずのお孫さんが預金をきちんと管理できていませんよね?

この状態を税務署が見たら、
「きちんと贈与された財産を管理していないし、自分のもモノともしていない。だから贈与は成立していません!」
と言うでしょう。
(私も同じ意見です)

ですので、お孫さん名義の口座の通帳・カード・印鑑は、当然にお孫さんが持っていなければなりません。

4.実際に使ってみる

先程の3の説明とも重なるのですが、贈与された財産を実際に使うと、間違いなく贈与された証拠になると思います。

私がよくご説明しているのが、お孫さんが実際に使っている口座に振り込んでください。そうすれば、税務署に誤解を受けにくいと思いますよ。ということです。

例えば、遠方に住むお孫さん。
お孫さんは会社員をしています。

このお孫さんの給料振り込み口座(または家賃や生活費が落ちる口座)に贈与するのがベストと考えています。
というのも、贈与されたお金は、この通帳から実際に使われていく(=家賃や光熱費等で使われていく)ので、まさに贈与された財産を実際に使っている、という証明になるからです。
(お金がグルグルまわっていきますしね)

お金の贈与には、最新の注意を払ってみてください。

5.贈与税を払う

身内から財産を贈与された。
その財産の金額が、贈与税の基礎控除(110万円)を超える金額だった。
その場合は、贈与税を払う必要がありますので、贈与税申告書を税務署に提出して、贈与税を払いましょう。

たまに、このようなご質問を頂きます。
「先生~。贈与税を税務署に払っているんだから、税務署も贈与が成立していると認めるでしょう?」

これは、残念ながら、間違いです。
「贈与税を払っている=贈与が成立している」
とは、ならないんですね。
(過去に裁判例等でもそのような判断になっています)

最初にご説明したとおり、贈与が成立しているか否かは、5つの要件(と、私は勝手に呼んでいますが)を総合的に見て判断します。
(どれか1つに着目するわけではありません)

ですので、贈与税を払い忘れていても贈与が成立していることもありますし、逆に、贈与税を払っていても贈与が認められないということも、よくあります。

 

贈与についてのまとめ

贈与について、色々と確認してきました。

先程のご説明のとおり、贈与が成立しているか、していないか。
それが問題になるのは、贈与してから数年後~数十年後になります。

もし、税務署に、
「贈与が成立していないので、これはお父上の財産になります」
と判断されたら、大変ですよね。

ですので、できること(贈与契約書の作成、財産の管理状態等)は、きちんとやっておきましょう。
最低限、これらの点に注意を払って、正しい贈与をしてみてくださいね。

 

本件に関するご質問はお受けしておりません。予めご了承ください。

 

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