延納から物納に切り換えることができますか?

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

相続税の取得費加算が縮小されたことに伴い、物納がクローズアップされています。今回は、延納を選択してしまったが、途中から物納への切り替えることができるか、について考えてみたいと思います。

延納から物納への切り替えは可能!

延納とは、相続税の分割払いです。その分割払い(延納)から、現物納付(物納)に切り換えることは可能です。

これを「特定物納」といいます。この場合、延納での未払額の範囲内で物納申請をすることになります。

この特定物納ですが、あまり利用されていないようです。
ある国税局担当者にお聞きしたところ、「この国税局管内でも、特定物納はいままでに数件しかありませんでしたよ」と言われてしまいました・・・。

なぜなのでしょうか?

そもそも、延納と物納、どちらが有利かと聞かれれば、(状況にもよりますが)間違いなく物納をおすすめします。
延納であれば利息がかかってしまいますが、物納であれば売れないような財産でも適正価格で税務署が受け取ってくれるからです。

そのため、本来であれば、最初から物納すべきなのですが、

  • 先祖代々の土地を物納したくなかった
  • 物納しようとした財産が銀行担保に入っていたが返済により担保が外れた
  • お隣が測量に協力してくれなかったが、代替わりして息子さんが応じてくれた

といった理由により、あらためて物納したいという方がいらっしゃるのでしょう。

特定物納の特徴

特定物納は、次の特徴があります。

延納から10年以内でないと物納へ切り換えられない

特定物納は、相続税の申告期限から10年以内でないと切り換えられません。延納は最長でも20年間ですから、その半分を過ぎたら、もう返済実績があるからダメ、ということでしょうか。

申請財産の価額は申請時の価額による

読んで字のごとくです。相続税の申告期限から数年経過して、下落している土地を申請した場合は、損をするかもしれません。

書類の提出期限は延長できない

物納であれば、書類が期限までに用意できなくとも、最長で1年間は延長することができました。ですが、特定物納は書類の提出期限を延長することができません。

何度でも特定物納の申請はできる

物納は、金銭納付を困難とする理由がない、管理処分不適格財産である、といった理由で却下されれば、物納することはできません(ただし、却下された物件については1回限りですが再申請できます)。

特定物納が却下された場合は、延納中の状態に戻ります。そのため、また特定物納の申請をすることは(理論上は)可能です。ここが普通の物納と違うところです。ですが、却下された時と何ら状況が変わらないのに、再申請すれば、税務署や国税局から門前払いをくうかもしれませんので、ご注意ください。

金銭納付が困難と認めてもらう必要がある

物納では「金銭納付を困難とする理由書」が必要でした。特定物納でも、もちろん必要です。やはり、これが一番のハードルになるでしょう。

この場合、特定物納を申請する時の状況により、金銭納付を困難とする理由書を記載することになります。却下されても、(理論上は)再申請が可能ですが、申請前に申請先の税務署や国税局に事前にきちんとご説明を尽くして、却下されないようにすべきかと思います。

特定物納は本当に最後の手段です

特定物納は、極めて件数が少なくなっています(全国で年間に数件程度しかありません)。

特定物納をするのであれば、最初から物納をすべきですし、延納をするにしてもきちんとした返済計画を立てて実行すべきです。
本当は、相続税を現金一括払いできるような準備が最も大切なのです。

ただし、予定と実際は異なるものです。相続したときと状況が変わり、物納できるようになったのであれば、特定物納を検討されてみても良いのではないでしょうか?

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。