物納のつぎのハードル「物件の整備」

IMG_7986-1.jpg

税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

今回は物納の2番目のハードル「物件整備」についてご説明したいと思います。

皆様は物納と言えば、土地や建物といった不動産を連想されるかと思います。そのとおり、物納される財産は不動産、特に土地が多いです。そのため、今回は土地についてご説明していきたいと思います。

物納で税務署に提出する書類とは?

土地を物納する際は、多くの書類が必要となりますが、最低限、次の書類が必要とされています。国税庁のホームページには、親切にも書類チェックリストが掲載されています。

  • 住宅地図等の写し(ラインマーカー等でチェックが必要)
  • 公図の写し
  • 登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本。相続登記が完了したもの)
  • 地積測量図(確定測量が終わり、きちんと境界標と一致するもの)
  • 境界線に関する確認書
  • 土地賃貸借契約書(貸している土地を物納する場合。相続人に名義変更して契約したもの)
  • 地代の領収書(貸している土地を物納する場合)

上記以外にも必要な書類が多くあります。例えば、公道に出るまでに私道がある場合は「通行承諾書」、借地上の建物が越境している場合は「工作物等の越境の是正に関する確約書」といった具合にです。

いつまでに書類を提出するのか?

これらの書類は、相続税の申告期限までに提出するものとされています。つまり、相続開始日(お亡くなりになった日)から10ヶ月以内に書類を準備して相続税の申告書と一緒に提出するものとされています。特に大変なのは、次の書類になるでしょう。

  • 地積測量図
  • お相手から貰うべき書類

地積測量図は「官民査定」が終わっているものが必要です。普通の土地は道路に接しています。道路の所有者はお役所です。このお役所と自分との境界を画定させないと、確定した地積測量図は作れません。この作業は土地家屋調査士の先生にお願いすることになりますが、それにはかなりの時間がかかります。

また、お相手から貰うべき書類とは、例えば「工作物等の越境の是正に関する確約書」といったものが挙げられます。お隣さんの屋根が自分の土地にはみ出していた場合は、お隣さんが建て替える際には必ず引っ込めますよ、という書類をお隣さんから貰う必要があります。このようなお隣さんや関係者から貰う書類は無数にあるのですが、日頃からお隣さんや関係者と良いお付き合いを続けていませんと、ハンコを押して貰えません。

これらの書類を、相続開始日から10ヶ月以内に提出するのです。といっても、はっきり言いまして、期限までに揃えるのは難しいです。そのため、書類の提出期限の延長制度が設けられています。

物納書類の提出の延長制度とは?

今までのご説明をご覧頂きましたとおり、物納に関する書類は、相続税の申告期限(相続開始日から10ヶ月以内)に提出するのが原則です。ですが、多くの場合、その期限までに揃えるのは難しいです。そのような場合には「提出期限の延長」をすることができます。具体的には、相続税の申告期限までに、物納申請書と一緒に「物納手続関係書類提出期限延長届出書」という書類を提出することにより、最長で1年間、提出期限を延長することができます。

この「物納手続関係書類提出期限延長届出書」は、一度につき、最短で1日、最長で3ヶ月まで延長することができます(ただし最長でも申告期限から1年が限度です)。ですが、延長している期間中は、利子税(利息)がおおよそ年2%程度かかってしまいます。そのため、実務上は書類が揃う時間を見極め、できるだけこまめに延長届出書を提出することがポイントです。そうすることにより、利子税の軽減につながるからです。ですが、短すぎると書類が提出できなくアウトといったことにもなりかねませんので、お気をつけください。

本気物納でなければ損をします!

平成18年に物納制度が大幅に改正されました。改正前の制度は「とりあえず物納」と呼ばれ、その名の通り、とりあえず物納申請書だけを提出して、あとはダラダラと時間だけが過ぎていくということがありました。明確な期限がなく、提出書類も明確ではなかったため、場合によっては申請してから5年~10年程度かかって物納が完了するという案件も多かったのです(事実、弊事務所の顧問先様でも物納申請から5年程度かかって収納が完了した案件がありました)。また、利息がかからなかったのも、時間がかかる原因でした。

ですが、改正後は本気物納(私が勝手にそう呼んでいますが)でなければ損をします。というのは次の理由からです。

  • 物納申請した物件の書類が(期限を延長しても)揃わない場合には、相続税を直ちに納付しなければならない
  • 物納申請した物件の差し替えは、税務署に却下された場合のみ、それも1回しか認められない
  • 万が一、申請物件が却下された場合は延納には切り替えられない

特に注意しなければならないのが、延長しても書類が揃わない場合です。この場合は、税務署による現地調査が始まりませんから、差し替えもできず、原則としてお金での一括納付になってしまいます。また、延納に切り替えることもできません。

そのため、一番に注意すべきは、「どの物件を物納申請するか、相続開始日から10ヶ月以内に判断する必要がある!」ということです。つまり、確実に書類を揃えられる自信がない物件については、最初から物納申請してはいけないのです。ここが平成18年改正後で一番注意すべきポイントです。

 

物納できる物件かを調べるためには、最低でも2ヶ月~3ヶ月くらいかかります。というのも、その物件が違法建築でないかや、きちんと道路と接道しているか、お隣さんから書類をもらえそうか、色々な視点から調べる必要があるからです。

物納申請期限(相続開始日から10ヶ月以内)ギリギリになって、税理士に相談しても時間がないからできない、と言われてしまうかもしれません。

そのようなことにならないよう、物納を検討されている方は、早めに物納経験のある税理士に相談したいものですね。

※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。