分割で相続税を払う方法(延納について)

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

今回は、相続税を分割して支払う、いわゆる「延納」について考えてみましょう。

相続税はお金での一括払いが原則です

こちらの解説にもあるように相続税はお金での一括払いが原則です。おそらく、相続税を払われる方の約95%以上が、普通にお金の一括払いで相続税をお支払いだと思います。
ですが、下記のような事情により、相続税を一括で払えない場合もあるかもしれません。

  • 大きなご自宅をお持ちだが手元資金が少ない
  • 土地や建物といった不動産ばかり相続したが、どれも手放したくない、または売れそうにない
  • 今後の事業資金計画を考えると一度に相続税を払うのは不安だ

そうなりますと、延納や物納を検討することになります。

延納でも「金銭納付を困難とする理由書」が必要になります

物納では「金銭納付を困難とする理由書」が必要になりましたが、延納でも必要になります。相続した預金が多額にあれば、延納は認められません。また、近々、不動産を売却してまとまったお金が入りそうな場合もダメです。
物納と同じく、必要書類を揃えて、一括納付が難しいことをきちんと説明できるようにしましょう。

もちろん、相続人様ご自身の収入についても税務署は目を光らせます。収入が多ければ、延納期間(分割払いする年数)も短くされてしまうかもしれません。

延納のメリット

これは「金利が低い」ということが挙げられるでしょう。銀行で借り入れして支払うよりも、延納にして分割払いをする方が金利が安くなる場合が多いです。

平成27年現在、延納の利息(利子税)は、不動産割合が75%以上の場合は、不動産に対する利子税は0.8%となっています。もちろん、法律改正により利率が上がる可能性もありますが、これだけ低ければ、延納して時間を稼ぐといったこともできるのではないでしょうか。

銀行から借りるとすれば、その方の資産状況にもよりますが、おそらく利率は「1.5%~2.5%」のあいだになるでしょう。そう考えますと、税務署から借りた方が(延納の方が)、利息が安くすむかもしれません。

延納のデメリット

延納はデメリットが多い制度です。

税務署に担保を差し出さなければならない

延納は相続税の分割払いです。税務署は、その方がきちんと相続税を払えるか心配です。そのため、延納をする場合は、その延納したい金額について、税務署に担保を差し出さなければなりません。担保に差し出すことができる資産は、土地や建物、株式といったところが代表的です。

また、担保に提供する額ですが、「延納したい相続税の金額+3年分の利子税」を担保に差し出す必要があります。不動産を担保に提供するのであれば、原則として、その不動産の相続税評価額が担保金額となります。

ところで、担保に提供しようとする不動産が、既に銀行借入金の担保になってしまっている場合は、どうすれば良いのでしょうか?このような不動産も延納の担保にすることができます。この場合は、不動産の相続税評価額から銀行借入金の残高を控除した金額までが、担保に差し出したものとされます。

よって、不動産の相続税評価額が1億円で銀行借入金が8千万円残っているのであれば、2千万円を担保提供したとされます(ただし例外もあるので実行前に税務署や国税局と相談することをおすすめ致します)

連帯納付義務で他の相続人に迷惑がかかる可能性がある

相続税には「連帯納付義務」という制度があります。誰か1人が相続税を払えなくなった場合に、他の相続人が相続した財産の範囲内で負担するという、いわば連座制のような制度です。

延納中は、まだ未払いの相続税が残っていますから、延納中の方が途中で払えなくなった場合は、他の相続人の方が、未払い相続税を払う必要がでてくるかもしれません。ですが、法律改正により、延納をきちんと受けていれば、他の方に迷惑がかかることはなくなりました(一定の条件が必要です)。

相続税を払えないのであれば、きちんと延納の手続きをしておくことが大切です。

借入金や延納税額を支払えなくなった場合は・・・

不動産をお持ちで、かつ、銀行からの借入金がある方は、それらの土地・建物の謄本に「共同担保目録***」と記載があるかもしれません。

アパート投資等で銀行借入をする場合、次のように、アパートと借入金とが対応することが一般的です。

  • Aアパートを建てた → 銀行のA借入金
  • Bアパートを建てた → 銀行のB借入金
  • Cアパートを建てた → 銀行のC借入金

ですが、銀行は「A借入金の返済ができなくなった場合は、Aアパートだけでなく、Bアパート・Cアパートも差し押さえられるようにしておこう」と考えます。

これらを「共同担保」といいます。わかりやすく言えば、鎖でABCが密接につながれているようなイメージでしょうか。これらの物件も延納の担保にすることはできますが、次の理由により、危険かと思います。

銀行借入金の返済ができなくなった場合

銀行からの借入金の返済ができなくなった場合は、銀行が担保を差し押さえて処分しようとするでしょう。そうなりますと、延納は強制的に解除されてしまいます。つまり、まだ払っていない相続税を、現金によって一括納付しなければなりません。

延納している相続税が払えなくなった場合

この場合は、税務署が担保物件を処分します。そうなりますと、銀行もだまっていないでしょう(銀行も抵当権を実行して借入金の回収に動くでしょう)。そうなりますと、ご自宅や先祖代々の資産まで失うことになりかねません。

担保をはずして貰うには?

延納のために担保提供した不動産を、売却するとしましょう。そして売却代金から延納している相続税を支払えれば、延納の苦しみから解放されます。

ですが、ここでも注意が必要です。それは、延納している相続税を先に払ってから担保が解除されるということです。

通常の銀行借入ですと、売買代金の決済と同時に、銀行が担保を解除してくれます。ですが、税務署はそのようなことはしてくれません。税務署の担保に入っている不動産を売却したければ、先に、まだ払っていない相続税を払えるよう、どこからかお金を工面する必要があるのです。この点にも注意が必要になります。

延納するにも細心の注意が必要です

延納は、物納に比べて簡単だと思われがちです。たしかに、税務署に提出する書類が少なく、手続きも簡単に思いがちです。

ですが、もし延納している相続税が払えなくなった場合は、どのような事態になってしまうのか、をきちんと説明できる税理士はとても少ないはずです。

「とりあえず延納で相続税を支払っておくか」というのは、とても危険な考え方なのです。

延納は、きちんと資金計画ができているか、延納から物納への切り換えも考えるのか(特定物納)、途中で資産を売却して払うのか、といった様々な可能性を考えた後に行うべきです。

延納するなら、本気で延納する必要があるのです。

資金計画を考えるには時間が必要です。相続税が高額になりそうな方は、事前に税理士に相談されることが大切ですね。

※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。