物納のご相談

「物納についての誤解や思い込み」

最近、相続税のご相談を受ける際に「物納ってどうなの?」というご相談をいただきます。
物納とは相続税を(お金ではなく)現物で支払うことです。

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、平成18年の相続税法改正により、物納が大変厳しくなりました。そのため、物納申請件数が激減しており(国税庁発表によると、平成26年度の申請件数は全国でたった120件!)、改正後の物納申請の経験者が大変少なくなっております。

弊事務所では、(大変厳しくなった)平成18年改正後の物納の申請経験があり、かつ、無事成功しております。
「物納は難しい」「税務署が認めてくれないのでは」等々、誤解や思い込みがあるかと思います。ですが、事前に準備や対策することにより、物納をすることは可能です。
物納の難しさ、物納の有効性といった、実際の現場で起きている情報を皆様にお伝えできればと思っております。

「物納のメリット」

なぜ物納が有効なのかをご説明します。

譲渡所得税がかからない(取得費加算の枠の縮小)

相続した土地を売って、その代金で相続税を払うという方は、昔から多くいらっしゃいました。そのような方を救済するために「相続税の取得費加算」という制度があります。
これは、相続税を支払うために土地を売ったのであれば、土地売却についての税金を安くしてあげましょう、という制度です。
先祖代々の土地を売却されたのであれば、売却代金のほぼ2割の税金(譲渡所得税)がかかりますが、これが軽減される特例です。
ですが、平成27年1月1日以降、この特例が相当に縮小されてしまったのです。
具体的にご説明していきます(ご説明のため一部簡略化しております)。

(旧制度)平成26年12月31日の相続開始まで

その者の相続税額×その者の相続した土地等の全ての課税価格÷その者の相続税の課税価格

この計算式では、その方が相続した土地の全てを特例の対象とすることができました。つまり、相続した土地のうち、実際に売却した分だけではなく売却しなかった分も含めて特例を使うことができました。よって、土地をたくさん相続された方は、土地を売却しても譲渡所得税がかからないということがよくありました。

(新制度)平成27年1月1日の相続開始以降

その者の相続税額×その者の相続した土地等のうち今回売却した分の課税価格÷その者の相続税の課税価格

しかしながら、上記算式のように、平成27年以降は売却した土地に対応する分しか取得費加算の対象となりません。そのため、相続税納付のために先祖代々の土地(つまり購入した金額がほぼ0円の土地)を売却された場合は、殆どの場合で約2割近い譲渡所得税がかかってしまいます。

これに対して国に物納した場合は上記の譲渡所得税がかかりません。これが売却との大きな違いです。

例えばですが、先祖代々の土地を1億円で売却できるとしましょう。
これには約2割の譲渡所得税がかかりますので売却後の手取額は約8,000万円となるはずです(実際は仲介手数料等の諸経費がかかりますので手取りはもう少し少なくなります)

これに対して物納した場合ですが、相続税評価額である8,000万円(理論的には相続税評価額は時価の約8割になるとされていますので、1億円の8割である8,000万円)で収納されることになります。

旧制度であれば、取得費加算の枠が大きかったため、譲渡所得税の負担が少なくなり(場合によっては譲渡所得税がかからない場合もありました)、物納よりも売却して納税した方が断然有利になることが多かったのです。
ですが、新制度では取得費加算の枠は縮小されてしまったため、物納を検討せざるを得なくなりました。

売却して納税した方が良いか、物納した方が良いかの判断ですが、一般的には次の算式により判断することになります。

  • 売却した方が有利
    売却代金-仲介手数料等-譲渡所得税等の税金 > 相続税評価額
  • 物納した方が有利
    売却代金-仲介手数料等-譲渡所得税等の税金 < 相続税評価額

平成26年までは取得費加算の枠が大きいため、ご依頼者様に「売却しましょう!」とアドバイスできたのですが、この枠が縮小されたため、物納も検討しなければならなくなりました。
実際には上記の算式だけでなく、今後の土地管理や相続人の年齢等を考慮して総合的に判断していくことになります。

不要な財産の整理ができる

都内の方はあまり意識されないでしょうが、いったん地方にでれば、路線価で売れる土地の方が少ないです。そのような遠方にある土地は管理も大変ですし、収益もあまり生みませんので物納した方が良いかもしれません。

また、地主の方は物納によって不要な底地(他人に貸している土地)の整理もできます。
底地は管理が大変です(安すぎる地代、地代の請求、20年に1回の契約更新、問題のある借地人との交渉等々)。
また、借地人に売却しようとしても路線価以上で買い取ってくださる方も少なく、底地買い取り業者に売っても相場の1割~2割程度に買いたたかれてしまいます。これも物納できれば、低い金額で売却するよりも大変有利になります。

値下がりした財産も物納できる

値下がりした上場株式も物納することが可能です。相続税では相続開始日現在の価値で相続税を計算するため、相続開始後に大幅に値下がりした上場株式といった財産は、物納した方が有利といえるでしょう
ですが、後でご説明する「金銭納付を困難とする理由書」の問題がありますので、費用対効果を考えますと、相当に値下がり(例えば2割~3割以上の値下がり)している上場株式といったものを検討すると良いかもしれません。

物納のデメリット

物納にはメリットだけでなくデメリットも存在します。順にご説明していきます。

金銭での納付が難しいことを証明しなければならない

相続税はお金で支払うのが大原則です。お金で支払えない場合のみ、特例として物納が認められているのです。具体的には次のような考え方になります。

金銭納付(お金で一括払い)⇒(お金で一括払いができない場合)延納(お金で分割払い)⇒(分割払いでも払えない場合)物納(相続した財産(不動産や有価証券等)で支払う)

上記でお分かりのとおり、まずはお金で一括払いをする必要があります(相続開始から10ヶ月以内に支払います)。
ですが、一括払いできない場合は最高20年間の分割払いを求められます。
それでもダメと税務署に認めてもらえれば、物納できることになります。
では、お金で払えるか払えないかをどのように判断するのでしょうか?

それは「金銭納付を困難とする理由書」により判断します。
この書類は、被相続人と相続人のお金の流れを記載し、相続税を20年分割でも払えないから物納させてください、ということを税務署に説明する資料です。
この資料、普通に記載すると多くの場合、物納はダメと判定されてしまいます。税務署に認めてもらうには、疎明資料(相続人の通帳や家計簿等)を添付し、延納でも払えないことを税務署に理解して頂かなければなりません。
よって、税理士と相続人様の連絡を密にして、書類を書き上げる必要があります。相続人様の個人的な出費も記載しなければならないため、税理士との信頼関係が成功のカギとなります。
あくまで個人的な感想ですが、この金銭納付を困難とする理由書を税務署に認めてもらえれば、物納の5割~6割程度は達成したといえるのではないでしょうか。

相続発生前に準備をしておかなければならない

金銭納付を困難とする理由書以外にも問題はあります。それは物件の整備です。一般の方は物納と言えば土地の物納、とお思いです。そのご認識に間違いはありません。(実際には建物や上場株式の物納もできるのですが)

ところで、土地を物納するということは、土地を売却するということと同じ事です(土地を受け取る方が一般の方か国かの違いだけです)。そのため、土地を物納する際は、売却するときと同じか、それ以上の書類提出を求められます。
土地の種類(更地か、貸しているか、建物があるか否か等々)によっても違うのですが、1つの土地について、だいたい10~20程度の書類を税務署に提出しなければなりません。これら書類は、原則として相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)までに提出しなければなりません。提出延長も認められますが、延長中は利息がかかってしまいます。
下記の書類は特に注意が必要です。

  • 測量図(測量は数ヶ月かかる場合もあり間に合わない可能性がある)
  • 工作物越境、通行承諾書といったお隣さんからもらう書類(今までの人間関係が大切)

生前に測量しておけば測量費支払いにより相続財産を減らすこともできますので、事前準備はとても大切です。ですが、被相続人がお元気な時に、被相続人様が亡くなることを想定して動くことに対して抵抗がある方も多いのです。よって、相続人様と税理士とでよく相談のうえ行うようにしてください。

確実にできると言い切れない

まず、「金銭納付を困難とする理由書」を税務署に認めてもらわなければなりません。
また、物納申請財産について現地調査時に財務局(財産の調査は税務署ではなく財務局が行います)からOKをもらう必要があります。
このように、税務署員や財務局職員のご判断を頂くことになりますが、お互い人間同士ですので、誤解も生じて先に進めないときもございます。
そのようなことにならないように、税務署の方や財務局の方に、何度もご説明を尽くす必要があります。それには、物納を経験した税理士や土地家屋調査士の先生等の力が必要になるかと考えます。

相続税が大きくなる場合は物納を検討しましょう

色々とご説明してまいりましたが、物納ができる場面は限られてくるかと思います。ですが、一度は検討いただきまして、結果として使えない、または使わないのであれば問題はありません。全く検討しないのは問題だと思われます。場合によっては物納をすることができ、その方が有利という場合もあるのですから。

まず、平成18年の改正により金銭納付困難理由の厳格化がなされ、さらに上記のような事情が加わり、物納の申請件数は減少の一途をたどっています。ですが、使い方によっては、まだまだ有効であり、相続人ご家族様にとって有利な選択肢になる可能性がございます

そのため、相続税申告を税理士先生にお願いする際は、平成18年の改正後の物納のご経験があるかないか、お聞きするとよいでしょう。(改正前と改正後の物納手続きは相当に変わってしまい、かつ厳しくなってしまいました。そのため、お聞きになる場合は必ず、新制度のご経験があるかをお聞きになるべきです)。

もし、改正後の物納申請のご経験があるようならば、相続税申告の心強いお味方になってくださることでしょう。(というのも、物納は相続税の法律を網羅していないとできないようになっております。そのため、改正後の物納申請を経験されているということは、一般の税理士先生よりも相続税の知識があるということになるかと思います。もちろんケースバイケースですなのですが)

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