間違えやすい相続税の土地評価(8)「倍率方式でミスしやすい点」

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

中央区相続税理士、石橋です。

土地の評価で路線価方式と倍率方式がある。
これは前回までにご説明しました。

都心部であれば、ほとんどが路線価評価なんですが、逆に地方に行きますと、倍率評価で評価することが多いんですね。

私の税理士事務所は東京都中央区にありますから、相続税を計算する際の土地も都心部にあることが多く、殆どが路線価評価の土地です。
割合からいくと、「路線価評価9:倍率評価1」といったところでしょうか。

ただ、地方にいきますと殆どが倍率評価になります。
今回は倍率方式で間違えやすい点について、ご説明していくことにしましょう。

 

倍率での評価とは?

こちらの図をみてください。

倍率方式.png

路線価がある道路と、路線価がない道路とが混在しています。
そして、路線価がない道路の地域は「倍率地域」との記載があります。

都心であれば、税務署が土地を調べて、
「この土地は1㎡あたり、いくらである」
と決めることができます。
(本当は基準地点だけ決めて、あとはコンピュータで計算しているんですが)

ですが、地方ですと、そんなに役所の人員も割けませんし、広いですし、土地の金額も低いです。
そのような地域は、次のような計算方法で計算することにしたんですね。

「固定資産税評価額×倍率」

固定資産税評価額は、その土地の地元の役所の固定資産税課が、きちんと?計算して決めています。
(一応、時価の7割くらいになるように設定します)
ですから、この固定資産税評価額に、一定の倍率(補正率)をかけて土地の金額を計算する、と税務署は決めたのです。

固定資産税評価額に倍率をかける。だから「倍率方式」というんですね。

ちなみに宅地の倍率で「1.1倍」が多いのは、路線価の基準に引き直しているからです。
土地の時価が10である場合、相続税評価額は8、固定資産税評価額は7になるように設定されています。
この7に1.1を乗じると「7.7=約8」になります。つまり、相続税評価額の水準に引き直すために、1.1倍を乗じているんですね。

 

倍率方式で間違えやすい点

倍率方式は「固定資産税評価額×倍率」とご説明しました。
そうすると、(色々と複雑だった)路線価方式よりも簡単なので、ミスしようがないのでは?
そうお考えになる方も多いんですが、実は倍率方式も意外とミスが多いんですね。
ミスしやすい点、ミスが実際にあった点について、具体例を挙げて考えてみたいと思います。

(1)基準年度の選択でミス

倍率方式で評価する際は、「固定資産税評価額×倍率」で計算します。
ここでの固定資産税評価額は「基準年度」を使うことになっています。

固定資産税を計算する際、固定資産税評価額というものを決めます。
これは、固定資産税を計算する際の土地の時価、とでも言うべきものです。

この固定資産税評価額ですが、毎年計算するのは大変ですから、基準年度で決めたら、3年間は据え置くものとされています。
つまり、3年ごとに変わるわけです。

基準年度は直近ですと、平成27年、その前は平成24年、平成21年といった具合に3年ごとに評価金額が変わります。
言い換えると、3年間は固定ですから、平成25年の相続税の計算をする際は、平成25年の固定資産税評価額を使っても問題ない。そう思いませんか?
実際にそのように計算している税理士先生は多いですし、そのような計算をしている相続税申告書を多く見てきました。

ですが、本当にそれでよいのでしょうか・・・?

倍率方式の土地を評価する際は、「財産評価基本通達の21(倍率方式)」より計算します。
そこに、次のような文章があります。

「倍率方式とは、固定資産税評価額(土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。)に国税局長が一定の地域ごとにその地域の実情に即するように定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式をいう。(一部省略)」

ここで注意すべきは、「基準年度の価格」という部分です。
基準年度とは、直近ですと平成27年や平成24年ですから、この年度の金額を使いなさい、と言っているのです。

「3年間は固定資産税評価額が据え置きなんだから、平成24年でなく、平成25年の金額を使ってもよいのでは?」
そのような意見を他の税理士先生からお聞きすることがあります。

ですが、平成24年と平成25年の固定資産税評価額は違うことがある!と声を大にして言いたいです。

固定資産税評価額は3年間据え置きです。これは全国共通なのですが、自治体によっては、
「こんな不景気で土地の金額も下がり続けている。固定資産税を払うのも大変だろう。だからウチは独自に値下げしてあげよう」
として、勝手に固定資産税評価額を下げている自治体もあるんですね。
(勝手ではなく、そのような法律があるんですが・・・)

固定資産税評価額に乗ずる「倍率」は、その値下がり分まで織り込んで設定しています。
例えば、土地の金額が値下がりしていたら、平成24年は「1.0倍」、平成25年は「0.9倍」といったようにです。
つまり、自治体が勝手に値下げした平成25年分の固定資産税評価額に、値下げを考慮した平成25年分の倍率を乗じると、値下げの二重取りとなってしまい、評価が安くなりすぎてしまうんですね。

私自身もそのような固定資産税の納税通知書を見たこともありますし、実際に評価をしたこともあります。都心ではあまり見かけませんが、地方では結構あるんですね。
ですから、横着せず、きちんと平成27年や平成24年の固定資産税の評価証明書を取り寄せる。
そして、基準年度の年度の固定資産税評価額に乗じる倍率は、評価年分(相続開始分)で計算する。
これが正しい方法になります。

 

(2)倍率地域でも不整形地補正率等を使える場合がある

倍率方式は「固定資産税評価額×倍率」とご説明しました。
この場合、普通は不整形地補正率といった補正率は使いません。
というのも、固定資産税評価額を計算する際に、固定資産税の法律で、これらに似た補正率を使って計算しているからなんですね。

ですが、倍率方式の土地であっても、これらの補正率を使えることがあるんですね。
例えば、倍率地域にある土地で、地目は山林となっているが、現況は雑種地といった、特殊な土地を評価する場合、宅地比準方式という方法により計算する場合があります。

このような土地の場合、固定資産税評価額は山林であることを前提に値付けされていますから、とても安い金額になっています。
そのため、まずはその土地を管轄する役所から固定資産税評価証明書と取り寄せます。

役所から、この固定資産税の評価証明書を取り寄せる際には、
「1㎡あたりの近傍宅地の価額を入れてください」
とお願いして取り寄せます。

そして、この近傍宅地の価額をもとに、その土地の金額を計算するんですね。
(これを「宅地比準方式」といいます)
このときには、奥行価格補正率や不整形地補正率を使える場合があります。
この近傍宅地の価額は、綺麗な形を想定しているわけで、評価する土地が綺麗でなければ、価値が落ちますから。
ただし、その場合の補正率は、普通住宅地域のものを使うことになっています。

倍率方式だから簡単だ、とおっしゃる税理士先生もいらっしゃいますが、倍率方式であっても色々と難しい論点が出てきます。

 

固定資産税評価額が間違っていないかも確認しましょう

倍率方式は固定資産税評価額をベースに計算するのですが、その固定資産税評価額そのものが間違っている場合もあります。
ここでは説明を省略しますが、固定資産税の評価は、色々な論点があります。

  • 評価単位の問題
    (2つと評価すべきところを1つと評価している場合がある)
  • 現況地目の認定間違い
  • 小規模住宅用地の適用忘れ

固定資産税の評価を詳しくお知りになりたい方は、管轄している役所の固定資産税課に行けば教えて頂けるかと思います。
固定資産税は毎年かかる税金ですので、疑問点があれば、ぜひ役所の方に相談することをお勧めします。

倍率方式は簡単なようでいて、結構難しいんですね。
特に、農地や山林といった土地になってきますと、単なる倍率方式ではなく、他の論点も出てきます。
地方の土地は、単価が高くないのですが、いかんせん広いですから、間違った場合、被害が大きくなることもあります。
ぜひ気をつけたいものですね。

 

 

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