土地を時効で手に入れたら・・・?

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

中央区の相続税理士、石橋です。

土地を多くお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
ですが、土地を国からタダで手に入れる。そんなことが、あるかもしれません。

本当でしょうか?

結論から言いますと、たまにあります。
土地の時効取得と言われるものです。

土地をタダでもらった場合には税金がかかりますから、気をつけて頂きたいです。

今回は、実例を使って、解説していきましょう。

地番が入っていない土地とは?

数年前にあった出来事です。
(守秘義務がありますので、実例をもとに若干加工しております)

ある地主様は、土地をいくつもお持ちでした。
その中の一つに、次のような土地がありました。

時効取得.png

この土地は上と下とに分断されているように見えますが、実際には緑赤青を一体で利用しています。

土地には必ず地番が入っています。
地番とは、土地を管理するための番号であって、同じ地番のものはありません。

※地番と似たもので「住所」というものがありますが、こちらは違う土地でも同じ住所ということがあり得ます。

ですから、緑の土地には「1-1」という地番が、青色の土地には「1-2」という地番が入っています。
ですが、赤い土地にについて、地番が入っていませんね・・・。

地番が入っていない土地は、「無番地(むばんち)」という呼び方をします。
無番地は、原則として国有地、つまり国が持っている土地ということになります。

何でこのように住宅が建っている土地に、国有地が入り込んでいるんでしょうか。
色々な推測ができますが、可能性の高いのは、この土地は以前は田んぼや畑だったのではないか?ということです。田んぼや畑の間は畦や畝がありますね。これらは公共のものとして、国有地だったわけです。

それらが、ずっと国有地のまま来てしまった可能性があります。

いわゆる、赤道(あかみち)と呼ばれるものですね。

では、自分の土地に地番が入っているか、入っていないか、どの資料を取り寄せれば分かるんでしょうか?
これは「公図(公図)」という資料を法務局から取り寄せれば分かります。

公図とは、土地の地番や位置関係、お隣さんとの関係を見るためのもので、土地の形や面積は、だいたいで作られています。
(正確に知りたければ、測量図を取り寄せてください)

ですが、権利関係を調べるためには必ず確認すべきものです。

先程の図にある土地について、公図で取り寄せたところ、地番が入っていなかった。
だから、無番地=国有地と推定できるわけです。

(参考)網走番外地とは?

関係ありませんが、網走番外地(あばしりばんがいち)という映画があります。
網走刑務所を舞台としたものですが、網走刑務所の敷地は国有地のはずです。

(すみません、確認してませんが・・・)

番外地とは無番地のことを意味します。

ですから、「網走番外地=国有地」ということになりますね。

 

時効取得の方法

土地の上に占有(居座ること)を続け、誰からも文句を言われなかった場合、その土地が自分のものになることがあります。
いわゆる「時効取得(時効取得)」というものです。

その土地が他人のものであることを知っていた場合は原則20年、他人のものであることを知らなかった場合は原則10年で、自分のものになります。

ですが、20年間占有していても、自動的に自分のものになるわけではありません。
自分のものにするためには、「この土地は自分のものである!」と宣言して、みんなに知らせる必要があります。

これを「時効の援用(えんよう)」といいます。

このような赤い国有地の場合は、土地家屋調査士の先生にお願いして、国から自分のものになるよう手続きをしてもらいましょう。

特に、周りの方の同意書が必要になる場合もありますから、早めに自分の名義にして頂き、将来の相続や売却に備えましょう。

 

土地を時効取得した場合の税金は?

ところで、土地を時効取得したということは、いわば土地をタダで手にいれたということですから、税金がかかります。
では、どのような税金がかかるのでしょうか?

タダでもらったのですから、感じとしては贈与税がかかりそうな気もしますが・・・。
正解は所得税(一時所得)です。

例えば、時価が500万円の土地を、国から時効取得したとしましょう。
そうすると、次のような計算になります。

(500万円-50万円)×1/2=225万円(所得税の課税所得に参入する金額)

この225万円に所得税の税率をかけた金額が税金となります。
一時所得になりますので、50万円を引いて、さらに2分の1しますから、税金的には大きな負担にはならないはずです。

ですが、大きな土地の場合は金額も大きくなりますから、気をつけたいものです。

ちなみに、国税庁のホームページ(土地等の財産を時効の援用により取得したとき)にも、同じ記載があります。

 

土地の時価はどうやって計算すれば良いのか?

ところで、さきほど土地の時価は500万円と仮定しましたが、土地の時価はどうやって計算すべきなのでしょうか?

相続税の路線価でしょうか?それとも固定資産税評価額でしょうか?
市販の書籍には書いてないことです。

答えは、平成25年7月24日の国税不服審判所の公表裁決事例に記載されています。

長々と文章が書いてありますが、結論だけ。

答えは、「国からの払い下げ金額をベースに計算する」です。

土地を国から取得する場合、「時効取得」と「払い下げ」の二つがあります。
払い下げの場合、国にお金を払って払い下げてもらうのですが、この払い下げ代金の分をタダでもらった、と税金は考えます。

ですから、払い下げ金額を計算できれば、土地の時価も計算できるわけです。

この払い下げ金額ですが、この図のような単独利用できないような価値の低い土地は、相続税評価額に需給関係による調整率を乗じて計算することになっています。
(詳しくは裁決の本文をご覧ください)

ただ、この裁決は単独利用できないような細くて薄い土地についてのものですから、単独利用できる土地を時効取得した場合は、計算が異なります。ご注意ください。

 

時効取得と払い下げの違い

ところで、時効取得と似たもので、「払い下げ」というものがあります。
払い下げは、その名の通り、国にお金を払って土地を払い下げてもらいます。

ですから、特に税金はかかりません。

(固定資産税は増えるかもしれませんが)

ですが、問題は、登記簿謄本からは、時効取得か、払い下げかを判断できない、ということです。

土地の登記簿謄本をご覧になった方であればお分かりでしょうが、謄本には、その不動産をどうやって取得したかが書いてあります。
ですが、時効取得でも払い下げでも、土地の取得原因は「不詳」と表示されるんですね。

つまり、謄本を見ただけでは、時効取得したか、払い下げを受けたか、わからないようになっているんですね。

ですから、税理士の方でも、このような謄本を見たら、お客様や手続きを担当した土地家屋調査士の先生にお聞きして、時効取得かどうか、確認すべきなんですね。
もし、時効取得でしたら、一時所得して、確定申告が必要になりますのでご注意ください。

土地の時効取得も払い下げも、普通のご家庭では、あまりご縁のないことかもしれません。
ですが、ご自身の住んでいる、または貸されている土地の公図をおとりになり、地番が入っていない無番地の土地があれば、時効取得か払い下げ、どちらかのお手続きが必要になるかもしれません。

その場合は、早めのお手続きをお願い致します。

 

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。