遺言書の探し方について

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

最近、遺言書について注目が集まっています。

政府が、「遺言書を作成したら相続税を安くする(遺言控除)」制度の検討を始めたというニュースが流れました。その影響もあるかと思います。

そこで、今回は遺言書について、とりわけ遺言書の探し方について解説していきたいと思います。

遺言書は大きく分けて2種類あります

よく使われる遺言書ですが、「自筆遺言」と「公正証書遺言」の2つがあります(本当は、この他にも秘密遺言証書といったものもありますが、実務上はほとんどがこの2つです)。

まずは、これらについて簡単にご説明しておきましょう。

自筆遺言

自筆遺言とは、その名の通り、お亡くなりになった方が自分で書いた遺言書です。これには、以下の情報を自署で記入します。

  • 本文(誰に何をあげるか)
  • 日付
  • 氏名
  • 押印

注意が必要なのは、全文を自署で書かなければならないということです。つまりパソコンで書いてはダメと言うことになります。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人役場に行って、公証人(簡単に言えば、偉くて嘘をつかないであろうという方)と一緒に作る遺言書です。

2人以上の証人が立ち会う、作るのに費用がかかるといったことがありますが、これが一番確実な遺言書と言われています。

 

遺言書はどうやって探せば良いのか?

私自身の経験を踏まえて解説していきたいと思います。

自筆遺言の探し方とは?

例えば、お父上がお亡くなりになったとしましょう。

もし遺言書があるならば、お父上が生前中に「金庫に遺言書を入れてあるから、その通りに分けなさい」とご家族にお伝えしているはずです。ですから、見つからないということはないでしょう。

私自身の経験でも、相続人代表の方に「どこにありましたか?」とお聞きしますと、大体が「金庫の中にありました」とお答えされます。

また、金庫は金庫でも、自宅金庫ではなく、まれに銀行の貸金庫にしまわれている方もいらっしゃいました。

「遺言書がある」と聞いていたのに金庫や書庫を探しても見つからない。そんなときは色々探すことになるでしょう。

まれに絵の額縁の裏や、神棚の経典を入れるところ?に入っていたというお話もお聞きしたことがあります。あると聞いていたのに見つからない場合は、根気よく探して頂くしかありません。

公正証書遺言の探し方とは?

公正証書遺言は、作った場所の公証人役場に保管されることになっています。ですから、作ったことが分かっていれば、ほぼ必ず見つかります。

ですが、問題は「作ったか作っていないかが分からない場合」です。

弊事務所でお受けした案件で、かなりの資産家の方がいらっしゃいました。そのお亡くなりになった方の奥様は、「主人は遺言書なんか作っていない!」と断言されていらっしゃいました。

私の方も、
「ないと思いますが、万が一あって、他の方に財産をあげると書いてあった場合、問題になってしまいます。ですから、あるかないか探しに行きましょう」

とお伝えし、一緒に公証人役場に探しに行くことになりました。

公証人役場では、遺言書があるかどうかを調べることができます(遺言書の検索といいます)。具体的には、地元の公証人役場に行って、「亡くなった主人が公正証書遺言を作っているか調べたい」と伝えて、コンピューターで検索してもらうのです。

もしあれば、「**の公証人役場で*月*日に作成した」という情報を貰えます。訪問した公証人役場で作っていれば見せて貰えますし、他の公証人役場で作成したのであれば、そこまで行く必要があります(コンピューターで検索できるのは、あるかないかだけで、文面までは見ることができないからです)。

なお、公証人役場に行く前には、必ず電話で予約をとってから行きましょう。

公証人役場は普通の役場と違い、ある程度、公証人の裁量があります。
なかには、「遺言書を作る前提じゃないと遺言書を検索させないよ」という公証人役場もありました・・・。単に調べるだけなら、優しい公証人がいるところがいいですね。ですので、必ず電話で予約をしてから行きましょう。

上記の件で、私も、その奥様と一緒に公証人役場に行きました。奥様の戸籍謄本と免許証を見せて、待つこと15分。結果は・・・「遺言書は作られていません」とのことでした!

結果的には良かったのですが、財産が多額にある方は、念のために遺言書があるかないか、公証人役場でお調べすることも検討された方がよいと思います。

 

遺言書どおりに分けないとダメか?

遺言書があった場合、必ず遺言書どおりに遺産を分けないとダメなのでしょうか?

以前から税理士の間で次のような疑問がありました。「遺言書どおりに分けないと、相続税の他に贈与税もかかるのではないか?

つまり、遺言書どおりに分けないと、「いったん遺言書どおりに財産をもらい、その直後に、そのもらった財産を他の相続人に贈与した」と税務署に認定されるのではないか?という疑問があったわけです。

実務上は、そんなことはないとして、遺言書があっても自由に遺産分割しておりました。

ですが、最近、こちらに国税庁の公式見解がのりました。つまり、遺言書どおりに相続しなくても贈与税はかからないのです。

ですから、「遺言書どおりに分けなくても大丈夫」が答えになります。

ただ、1点ご注意頂きたいのは、遺言書に相続人以外の第三者のお名前が入っている場合です。

この場合は、原則として、その第三者の同意が必要になります。遺言書どおりに分けたくない場合は、その第三者も交えて遺産分割協議をする必要がでてくるかもしれません。ご注意ください。

 

遺産の分け方によって相続税や所得税が増えたり減ったりします。自筆遺言にしろ、公正証書遺言にしろ、遺言書を作る際は、事前に、相続税に詳しい税理士に見てもらってから作るようにしてください。

これからは更なる増税が予定されています。少しでも財産が残るよう、色々と考えておきたいものですね。

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。