相続の手続きで気をつけること(最後に相続税を納付する)

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

相続税の計算が無事終わりました。そこまで来ましたら、最後に次の2つの作業をすることになります。

  • 相続税の申告書を税務署に提出する
  • 納付書を使って相続税を納める

相続税を計算した結果として、税務署に「相続税の申告書」を提出することになります。提出期限は相続が発生してから10ヶ月以内なのですが、1日でも遅れますと約15%程度の罰金がついてしまいます。

また、同じく10ヶ月以内に、相続税を「納付書」を使って、銀行で納付する必要があります。これも遅れると利息がついてしまいます。

この2つについて、ご説明していきましょう。

相続税の申告書を税務署に提出する

相続税の申告書は次のような形式になっています。

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これは1枚目の表紙部分になりますが、実際に提出するのは、どんなに少なくても数十枚、多ければ何百枚にもなります。実際に、私がお受けした資産家の相続では、添付資料も合わせると1,000枚を超えました。

最低限、税務署に提出しなければならない書類は、せいぜい20枚程度です。ですがなぜ数百枚や数千枚にもなるのでしょうか?

これは、税務署に対して、「相続税を計算する際、財産はこのような方法で計算しました」という資料を添付するからなんですね。添付資料が多くなる財産といえば、例えば次のような財産になるでしょうか。

  • 預貯金
  • 上場株式
  • 土地建物

「預貯金」

預貯金は、税務署が一番厳しくチェックします。俗に言う「名義預金(めいぎよきん)」というのを探すためです。

十数年前まで、親御様がお子様の通帳を簡単に作れる時期がありました。親御様の心情はこのようなものでしょうか。
「かわいい次郎(子供)のために、次郎名義の口座を作ってお金を貯めておいてやるか。でも実際に通帳印鑑を渡すと使ってしまうだろう。だから通帳印鑑は私(親)が持つようにしよう

親御様がお子様のことを考えて預金通帳を作る。これは当たりまえのことです。
ちなみに私の両親も私名義の預金口座を作ってくれておりました・・・。残高はちょびっとしかありませんでしたが(笑)

これは、名義は子供ですが実質的には親の預貯金です。これは相続税の計算に含めなければなりません。格安で相続税申告を受けている会計事務所では、この部分のチェックをしないか、適当にチェックしているんですね。チェックするのは大変で、過去5年間程度の通帳をチェックする必要があるからなんです。

ですが、この名義預金がもれていて、税務署に指摘されたら罰金がついてしまいます。そうしたら、その分を損してしまいますよね。ですから、ある程度以上の預貯金をお持ちの方は、きちんとチェックしてくれる会計事務所に相続税の申告をお願いした方がよいでしょう。

弊事務所では、税務署から厳しく指摘される可能性がある方については、最初から預貯金のコピーを相続税の申告書に付けてしまいます(もちろんご依頼者様の許可を頂いてからですが)。そして、「*月*日の送金については**の購入費用である」といったように、最初から検討結果を示して、税務署から疑いを持たれないようにしています(その方が、ご依頼者様と税理士、双方にとって安心できますので)。

ですから、この預貯金の写しや検討結果をつけると、その部分だけで、数百枚くらいになってしまうこともあるわけです。

「上場株式」

これも税務署がチェックする項目です。預貯金と同じく、「名義株式(めいぎかぶしき)」を見つけるためなんですね。

上場株式には、預貯金と同じく、証券会社が取引履歴表(証券会社によって名前が違うことがあります)をつけています。これは過去の株式の移動記録が書いてあり、「*月*日に購入した」といった形式で表示されます。

収入がないお子様が大量の株式を持っている場合、「なんでそんなに持っているんですか?実質的には亡くなったお父様のものでしょう?」と聞かれることがありますので、注意が必要ですね。

このあたりも、疑わしい場合は、ご依頼者様にご説明をして、最初から取引履歴表や検討結果を税務署に出してしまう場合があります。

「土地建物」

土地については、大量の資料が必要になる場合があります。最低限、次のような資料を添付する必要があります。

  • 評価明細書
  • 住宅地図
  • 公図
  • 測量図
  • 測量図や公図を基にした不整形図
  • 登記簿謄本
  • (場合によっては)現地写真・容積率の証明資料・道路地図・広大地の検討資料等

ひとつの土地で十数枚になることも多いのです。会計事務所によっては、現地の確認をしないで机の上で計算してしまうところも多いです。そうした場合、土地の金額を安くできない場合があって、相続税を高く払ってしまう場合があるんですね。

弊事務所で以前お受けした大型の地主様ですと、土地だけで数百枚になってしまいました。仕方がないので、大型ファイルを4つほど購入して、このファイルに綴じて税務署に提出しました。税務署に提出したとき、窓口担当者が目を丸くしていたのを覚えています・・・。

繰り返しになりますが、相続税の申告書の提出期限は、相続が発生してから10ヶ月以内です。これらの添付資料も併せて、遅れずに提出するようにしましょう。

 

相続税を納付する

相続税の納付書は次のような書式になっています。

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これに必要事項(金額や氏名住所)をボールペンで記入して、最寄りの銀行で相続税を納めることになります。

相続税の納付は、現金一括払いが原則です。手元資金に不安がある方は、次のような対策が必要になります。

資産を売却する

相続税を払えるだけの手元資金がない場合は、資産を売却して資金を工面することになります。例えば、上場株式や投資信託を売却する、不動産を売却すると言ったようにです。

一番多いパターンとしましては、土地持ちの方の相続税でしょうか。土地はたくさんあるがお金がない。このような場合は、土地を売却して相続税の資金を捻出するこようにですになります。

この場合は譲渡所得税がかかってしまいますので、いくらで売れるかも考えながら実行する必要があります。

延納や物納を検討する

資産を売却しても相続税が払えない場合は、最終手段として「延納」や「物納」を検討することになります。

ですが、物納は平成18年の法律改正でとても厳しくなってしまいました。ですから、できるだけ手元資金でお支払いできるようにしておくべきです。

なお、弊事務所では、平成18年の法律改正後の物納についても、実際に成功しております。物納についてのご相談をお受けしておりますので、お困りの方はご相談ください。

 

相続税が納付できるか考えて計画を立てましょう

「相続税の計算が終わりましたので、後は相続税を納めておいてくださいね」と言って、納付書をお渡しして終わり。

そのような対応をする税理士がとても多いのですが、一番大切なことは、「相続税を計算する」ことではなく、「相続税をきちんと納められるか」にあります。

まずは相続税が手元資金で払えるか、ご心配差し上げる。それがだめなら、資産売却や物納・延納を考える。相続税をきちんと納められるか、そこまで考えてこそ、初めて相続税に詳しい税理士といえるのではないでしょうか。

多くの資産があるが手元資金が少ない。そのような方は、今から相続税がいくらになるか、簡単に計算しておくのも良いかもしれませんね。

 

※本記事に関するご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。