物納の最初のハードル「金銭納付を困難とする理由書」

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

物納する際のハードルは大きく分けて二つあります。1点目は「金銭納付を困難とする理由書」、2点目は「物納財産の整備」です。今回は「金銭納付を困難とする理由書」について考えてみたいと思います。

「金銭納付を困難とする理由書」とは?

「物納という選択肢について」でもご説明させて頂きましたとおり、物納をするためには、「金銭納付を困難とする理由書」という書類を相続税の申告期限までに税務署に提出し、(20年分割でも)お金で相続税を払うことは無理であるということを認めてもらう必要があります。

「金銭納付を困難とする理由書」は国税庁のホームページにも掲載されているので、ご興味のある方は確認してみてください。この書類に従って判定しますと、次のようになります。

相続したお金で払う

物納をしようとする相続人は、多額の金銭を相続していないことが第一条件となります。被相続人からお金を相続したならば相続税を払うのは簡単です。そのため、相続したお金で支払えてしまう場合は、物納できません。

また、相続財産のなかに、簡単に換金できる財産(貸付金や解約負担の少ない生命保険等)といった財産がある場合も、すぐにお金に換えて相続税を払えるとされて、この分も物納できません。(ただし上場株式や投資信託は、換価の容易な財産の対象にならないとされていますので、この点も注意が必要です)

相続人固有のお金で払う

次の段階として、相続人様が相続開始前から多額のお金(つまり相続人固有のお金)をお持ちであれば、そこから相続税を払わなければなりません。

ですが、必要な支出(例えばご自宅やお子様の教育資金等)があって、それを払うことによって手持ち資金が減ってしまったのであれば、結果として条件は満たすことになります。また、上場株式や投資信託といったものは金融財産ではありますが、お金の中に含まれないことになっております。(長期保有目的や値下がりリスクがあるため)これも注意が必要です。

20年分割(延納)で払えるか

さらに、相続人様が毎年の収入で相続税を支払えるのであれば、(最高20年間の)分割払いで払いなさい、ということになっています。(いわゆる延納というものです)

サラリーマンであれば、収入(給与)から支出(生活費や住宅ローン)を引いた金額を貯蓄にまわしているかと思います。この貯蓄分を20年分使っても相続税を支払えない場合は、その分について物納が認められます。なお、この収入・支出の中には、相続した財産からの収入(相続した物件の家賃収入等)も含んで計算しますので、ご注意ください。(これについては諸説ありますが、ここでは説明を省略します)

また、相続人とそのご家族の生活費は1ヶ月10万円で計算しなさい、と書類に書いてございます。(10万円という基準は生活保護の法律から来ているといわれています)。ただし、これについても色々な考え方があり、実際の生活費を積み上げて10万円を超えてしまうのであれば、そちらの実額計上が認められる場合もございます。(その場合はきちんとした証明資料が必要です)

臨時的な収入・支出についても考慮する

最後に、概ね1年以内の収入や支出(相続した土地を売却したり、自宅の修繕費を支払ったりする場合)の予定も考慮して判断されます。この支出を洗い出すことも大切です。物納のための測量費や海外旅行、お子さんの入学金等、いろいろな出費が考えられると思います。税理士の経験が試されるときでもあります。

上記を踏まえて総合的に判断されます

おおまかではありますが、上記の判断基準をクリアできれば、物納の最初のハードルをクリアできたといえるでしょう。とても厳しく感じられますが、実務的には、税理士と相続人様とが信頼関係を築くことができれば、ある程度の確立でクリアできると考えております。

例えばですが、相続人様が上場企業の社長様であった場合は、毎月の生活費は1人10万円ですまないと思いませんか?

銀座でのご接待、広い賃貸マンションの家賃、携帯電話代、お子様の授業料、相続したアパートの大規模修繕予定・・・。税理士は、これらのプライベートな支出を全てまとめて書面にしなければなりません。そう意味で、税理士と相続人様とのご信頼関係が大切なのです。

また、数字上では判断できない個別事情。(相続人様が重い病気でとてもご存命中に延納でも払いきれない等)が認められる場合もあります。

できれば被相続人様のお元気なうちに、大まかな相続税額を計算しておき、そこから物納を準備しておく。そのような方法が良いかと思います。

※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。